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人を想い、つながる組合

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人を想い、つながる組合

関西大学2年生

松原 杏樹

生活協同組合とくしま生協

大久保 秀幸

interview

学生と経営者がお互いに意見交換しながら、相互理解を深めるHR sessionの対談コンテンツ。

今回は、生活協同組合とくしま生協 理事長 大久保 秀幸様に、お話を伺いました。

関西大学2年生
松原 杏樹

関西大学経済学部。2026年卒業見込み。大学では、学園祭実行委員会に所属していた。社会人の方のお話を実際に聞けるという貴重な体験ができることに魅力を感じ、インターンシップに参加。

生活協同組合とくしま生協
大久保 秀幸

1963年4月生まれ。61歳。徳島大学短大土木科卒(最終年は、とくしま生協で働きながら1年間学業と仕事を両立し、無事卒業)。とくしま生協の配送担当者として1987年4月に入協し当時の北島支所に配属される。それ以降、グループ長・支所長・マネージャーを経験し、2005年6月に常勤理事(役員)に就任し、2013年6月に代表理事 専務に就任、2019年6月に現在の代表理事 理事長に就任し、現在に至る。いつも大切にし、心がけていることは「自分から先に大きな声で挨拶を」。

目次





組合員様ありきの組織

松原
本日はよろしくお願いいたします。徳島県出身なので本日の対談を楽しみにしておりました。
はじめに大久保様のご経歴についてご説明いただいてもよろしいでしょうか。


大久保
もともと私は違う会社で働いていたのですが、当時創立3年目で急激に成長していたとくしま生協に興味を持ち、転職しました。2005年から役員になり、2015年に専務理事、2019年に理事長になりました。


松原
そうなんですね。生協という組織について詳しく知らなかったのですが、とくしま生協様について調べていくうちに配達だけでなくさまざまな活動をされていることを知りました。


大久保
私も転職したときは生協のことを全く知りませんでした。生協は組合員様が出資して運営されているものなので、私を含めた職員は組合員様から雇われている形になるんです。そのため、組合員様の声に基づいて活動しています。


松原
組合員様との距離がかなり近いのだなという印象をいだきました。


地域「みんな」で作る組合

松原
とくしま生協様は3つの理念を掲げられていると思います。


大久保
はい。「わたしたちは家族の笑顔とありがとうの輪を広げます。」「わたしたちは関わりあうことで成長しあい、幸せの実感を広げます。」「わたしたちは徳島のすみずみまで、健康でいきいきとしたくらしを広げます。」ですね。3つの理念全部の頭につく「わたしたちは」っていう部分。これは組合員様、職員、県民という徳島県の全ての人を指しております。


松原
とくしま生協様で働く方だけを指しているわけではないのですね。理念を拝見したとき、私は特に地域住民の方との関わりに重きを置かれているなと思いました。


大久保
それは3つ目の「わたしたちは徳島のすみずみまで、健康でいきいきとしたくらしを広げます。」に関わってきますね。生協は県内でしか事業をしてはならないと法律で決まっていますので、こういった理念を掲げています。


松原
なるほど。徳島県内でどのような事業をされているのですか。


大久保
生協の事業は大きく3つあります。トラックの宅配事業、県内の店舗事業、共済事業ですね。主に宅配事業で県内全域を網羅しています。より部分的なものが店舗事業。日常的に組合員様のお役に立てるように徳島市内に2店舗を構えています。


松原
このような理念は大久保様がお考えになられたのでしょうか。


大久保
はい。さきほどあげた3つの理念、すぐ理解できたんじゃないかなと思います。以前は「暮らしづくりを協同で」という理念だったんです。しかしこれでは誰の立場で考えても何をしたら良いのか分からない。みんながどうしたら良いかが分かるような理念にしようということで、創立30年のときに今の理念に変えました。


松原
今の理念はより地域の皆様で協力している感じがあってとくしま生協様らしさが出ているのではないかなと思います。


売るのではなく、暮らしに役立てることが目的

松原
これから目指すとくしま生協様の姿をお伺いしたいです。


大久保
「徳島県にあって良かった」「組合員になって良かった」「生協に就職して良かった」「前進している」と思っていただけるような生協を作っていきたいです。この4点はずっと職員にも伝えていることです。


松原
なるほど。もう少し組合員様との関わり方についておききしたいです。「組合員になって良かった」と思っていただくための工夫や取り組みなどはありますか。


大久保
宅配事業では、職員が実際に試した商品の調理・味付けの仕方や食べ方を、組合員様に商品を届けるときにお知らせしています。「売る」ことではなく「どうしたら商品を通して組合員様の暮らしに役立てられるか」を常に意識して組合員様と関わることを大切にしていますね。


松原
生活に役立つ情報もお届けしておられるのですね。


大久保
我々だけではなく組合員様も情報を発信できる場を目指しています。


松原
例えば、どんな形ででしょうか。


大久保
そうですね。ある組合員様が「この卵はこういうふうにしたらおいしかったわよ」とお話しされたとします。そういったお話をどんどん広げてきたいんです。別の組合員様との会話で「この卵は新鮮ね」という話が生まれたら「〇〇さんがこういう調理法が良いとおっしゃっていましたよ」という感じで。


松原
組合員様が広めていくイメージですね。ありがとうございます。


正直に、包み隠さず

松原
宅配事業だけでなく店舗事業でも組合員様と関わると思いますが、そちらではどのように組合員様と関わっておられるのですか。


大久保
我々の店舗は鮮度、おいしさ、正直でぬくもりのある活気あふれるお店づくりを目指しています。例えば、甘くないリンゴが入ってきたら、「このリンゴは糖度が低いです」ということをわかるようにしようと心がけています。また、実際に食べてみないと味が分からない商品はその場で開けて食べていただいています。


松原
その場で開けてしまわれるのですね。売り物自体を食べていただくのは、まさに「正直」そのものだなと思いました。


大久保
こういう取り組みのおかげなのか、私が店を回っていると店舗の職員と顔なじみの組合員様がいらっしゃって、職員と話されている場面をよく見ますね。


松原
宅配だけというイメージが私の中にもあったのですが、それだけではなく組合員様との情報共有や店舗事業での試食などまでされていたのですね。驚きました。


1人1人の声は宝物

大久保
ほかにも、直接、組合員様の声をいただくために「あなたの声をきかせてねアンケート」 というアンケートを毎年1回実施しています。組合員様が生協に対し感じていることや暮らしの中で嬉しかったことなどをお答えいただく記述式のアンケートで、毎年2,000人くらいの方が答えてくださいます。


松原
この3つによって働きやすさが変わってくるのですか。


大久保
働きがいと働きやすさの2つのバランスを取っていく必要があるんです。
そこで当法人では、670名の職員に対し、組織力診断を行っています。今年で6回目の開催です。無記名でアンケートに答えてもらい、業界平均と比較した数値が出るようになっています。法人全体、事業所別、職種別に数値を出しています。


松原
2,000件もの回答を1つ1つ読んでいらっしゃるのですか。


大久保
読んでいます。特徴的な声は次年度に生かしたいので、私は全部読み込んでいますね。松原さんはKJ法って知っていますか。


松原
はい。いろいろなキーワードをカードに書き出して、それらをグループに分けて思考を整理する方法ですよね。


大久保
そうです。アンケートを読み込まないとキーワードを書き出せないから、大きなテーマが何か、課題の解決策は何か導き出せなくなってしまうんですね。ですから、組合員様のお声はお褒めの言葉もお叱りの言葉も、私からすると宝ですよ。


松原
全て読み込んでおられるなんて本当にすごいです。そういうところから信頼関係が生まれてくるのですね。


大久保
そうですね。声をきいて、それを形にできたときは組合員様にとても喜んでいただけますし。最近はスマホでのアンケートを少しずつ取り入れています。今はDXの時代です。そして20代~90代の幅広い方が生協を利用してくださいます。ですから、声をきく方法をこれからいろいろ考えていきたいなと思っていますね。


松原
たしかに、記述式以外の方法もあれば私達の世代も気軽に回答することができますね。


30年越しのお手紙

松原
これまでお話をうかがっていて、人と関わることをとても楽しんでおられるなと感じました。組合員様と関わってこられたなかで、うれしかったことはございますか。


大久保
今年に入ってからの出来事なんですが、私が配送を担当しているときにある組合員様から自筆の年賀状をいただいたんです。そこに「死ぬまで生協を利用します」って書かれていて。私、こんな年賀状をいただいたのははじめてなんですよ。もううれしくて、宝物にしています。


松原
大久保様ご自身が直接配送された組合員様なのですね。


大久保
それが今から30年くらい前によくお話していた方なんですよ。生協内部の機関誌に私の写真が載っているのをご覧になって年賀状を書いてくださったそうです。


松原
30年前!?それは社会人冥利に尽きますね。今の職員さんに不満があったらそのお手紙はないと思います。大久保様の人柄の良さはもちろん、今まで大久保様がやってこられたことが脈々と後輩に引き継がれていることがよく分かります


大久保
そうですね。みんな頑張ってくれていると思います。


若いうちからキャリアアップしてほしい

松原
新卒の視点からお話を伺いたいです。新卒で入られた職員さんが最初に配送担当に配属されるとホームページで見たのですが、それはなぜですか。


大久保
生協の基本は配送を通して組合員様と直接関わるところにあると思っているからです。1人1人の組合員様が自分たちの欲しい商品を利用したいということで作られている団体ですから、その基本がないと生協の職員としてどうなのかなと。なのでまずは配送からやってもらっています。


松原
配送を担当した後のキャリアアップはどのように進んでいくのでしょうか。


大久保
「入って何年したら、何をしたらこうなる」という具体的なものはありませんが、入って2、3年したらグループリーダーをしてもらい、その次のステップで所長や本部での管理部の経理などを担当してもらっています。


松原
思っていたよりキャリアアップの時期が早くて驚きました。


大久保
ここ1、2年はそうですね。というのも、30〜40代の職員が少ないんですよ。50歳以上の職員が多いから、あと3、5年したら定年を迎えてどんどん卒業していきます。そのため、若い職員は基本的には幹部職員を目指してくださいということで採用させてもらっているんです。


松原
新卒で採用された若い職員さんにとってはやりがいがありそうですね。


大久保
私ももう61歳ですからね。次の役員を育てていきたいので、若い世代にもっと頑張ってもらいたいです。


組合員様を想っての失敗はなんぼでも

松原
大久保様は、どんな人たちと目指す生協の姿を実現していかれたいですか。


大久保
素直な気持ちで考えて積極的に行動する人を求めています。私はよく職員さんに「組合員様のことを考えての失敗は、同じ失敗を繰り返すのでなければどれだけでもやってください」と言っています。
職員1人が失敗しても生協はつぶれませんから。失敗を積み重ねていったら職員の成長につながっていくと私は考えています。


松原
「失敗は成功のもと」とよく言いますしね。その失敗をするには素直に組合員様を想って挑戦する必要があるというわけですね。


大久保
それから明るい挨拶ができてありがとうの気持ちを持っている人。今こうして対談できているのは人事のマネージャーのおかげです。私もこうして手配してくれた職員に感謝の気持ちを持ちたいですね。そして思いやりと優しさを持っている人、志を高く持って継続して実行できる人と一緒に仕事をしたいです。


人と人とのつながりを大切に

松原
最後に、とくしま生協様に興味のある学生に、何かメッセージをお願いします。


大久保
生協の1番の良さは人と人とのつながりだと思うんです。さっき言ったアンケートに組合員様からたくさんありがとうの声をいただいているんですよ。そこに職員の名前が挙げられていることもあります。コロナ禍により人とのつながりという生協の強みを再確認しました。


松原
組合員様と直接お会いできない時期でしたよね。関わりを特に大切になさっている生協様にとって大変なことだったのではないかなと思います。


大久保
そうですね。私たちだけではなく、組合員様もそうだったと思います。不安で買い物に行けないなかで商品をお届けする職員への感謝の気持ちのほかに、直接会って話ができないという悲しみの声もいただいていました。


松原
双方にとってつらい時期でもあり、つながりの強さを再認識する時期でもあったのですね。


大久保
face to faceで他愛もない話や生活、お孫さんの話をする。そういう人と人との繋がりを大切にできる組織、そして自分の考えていることを思い切ってやれる組織じゃないかなと思っています。興味を持ってくださっている学生さんには是非一回見学に来ていただければなと思います。


松原
就活生として、徳島県民としてとても良いお話を伺うことができました。私もお手紙までいただけるような社会人になりたいなと思います。本日はありがとうございました。

大久保
こちらこそありがとうございました。頑張ってください。




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