関西学院大学3年生
湯浅 あかな
株式会社ビッグウッド
杉浦 眞悟
学生と経営者がお互いに意見交換しながら、相互理解を深めるHR sessionの対談コンテンツ。
今回は、株式会社ビッグウッド代表取締役社長 杉浦眞悟様に、お話を伺いました。
関西学院大学商学部。2025年卒業見込み。人材業界やIT業界を中心に就職活動中。趣味はゲームと動物カフェ巡り。 最近はフクロウの魅力にハマっている。
1957年愛媛県松山市生まれ。大学卒業後、地元愛媛へ戻り、家具店でアルバイトを始める。27歳で独立。70坪のプレハブ倉庫にて株式会社ビッグウッド杉木を設立後、独自の仕入により『アウトレット』家具店へ業態転換し、主に西日本を中心に各地へ展開。店舗数拡大。その後、ペルシャ絨毯等の小売販売、年関東進出(現在11店舗)、2021年『アウトレット』から『オフプライス』への業態転換などを経て、現在は直営33店舗・FC23店舗を展開中、今後も関東方面を中心に全地域・海外での展開も視野に。
目次
「いらっしゃいませ」と言いたくて
湯浅
はじめに杉浦様のご経歴についてお伺いさせてください。
杉浦
1957年生まれの68歳です。父を早くに亡くし、母に育ててもらいました。
大学まで出してもらいましたが、卒業のころに母の体調が悪くなり、地元に戻りました。
湯浅
そうだったのですね。
杉浦
就職もなくなったので家具屋でアルバイトをしていました。
オーナーさんから商品を預かって営業するアルバイトだったのですが、どうしてもお客様にお店に来てもらって「いらっしゃいませ」と言いたかったんです。
なので、27歳の時に独立して小さな家具屋を始めました。
6年くらいは自分の給与が取れませんでしたが、好きで始めたので苦ではなかったんです。
湯浅
お客様に「いらっしゃいませ」を言う、という夢が叶えられたからですね。
起死回生の一手
杉浦
ただ1990年に行き詰ってしまったんです。大きいお店と差別化ができず、
お客様がどんどんとられて、従業員のお給料も払えなくなりました。
大きなお店では売っていないものを売らないといけないと考え、いろいろ調べてみました。
でも、売ってないものがなかったんです。
湯浅
売ってないものがないというのは…。
杉浦
大きいお店で全部売っていたんですよ笑
例えば当社がソファーの専門店になろうと考えたとしても、大きな店舗には負けてしまうくらいの品揃えだったんです。だから何をやっても勝てないんです。
湯浅
そこで何か別のことに視点を向けたのですか。
杉浦
唯一扱っていなかったのが傷物家具だったので、アウトレットを始めました。
苦肉の策で、だめだったら廃業しようと思っていました。
最初はリサイクルショップだと思われて「これは中古品ですか?」と聞かれるんですよ。
違うといっても通じはしなかったのですが、「これだけきれいなら買おう」ということで
買っていただけるようになりました。それが口コミで広がっていき、繁盛店になったんです。
湯浅
起死回生の一手だったのですね。
杉浦
繁盛したので2店舗目、3店舗目とお店が増えていき、今では全国で56店舗です。
4,000年の技術とプライドに惚れて
湯浅
アウトレット業態に転換を進められた中で、ペルシャ絨毯の事業も進められていますよね。
杉浦
ペルシャ絨毯の事業は今から約30年前に始めました。
私は作り方とか歴史とかあまり知らなかったのですが、
初めて見たときに興味が湧いてイランまで見に行きました笑
知っていましたか、4,000年前から作り方が変わっていないんです。
湯浅
4,000年も前からですか!?
杉浦
そうなんです。ペルシャ絨毯って糸を織っていくわけではなく、1個ずつ結んで切ってを繰り返すんですね。1ミリくらいの粒を積み重ねていく作り方なんです。1日に5ミリしかできない、そういう製品なんです。完成までに1~2年かかるんですよ。
湯浅
えー!
杉浦
作っている人に、「どうしてそんなに大変な仕事をしているんですか?」と聞くと、「私が作った絨毯で世界中の人を幸せにできるんですよ」と答えるんです。すごいなと思いました。生活のため、お金のためじゃないんですね。代々作り続けることにプライドがありました。だから、もっと広めたいと思ったんです。
湯浅
素晴らしさを知って広めたいと考えられたんですね。
杉浦
そう思って一生懸命お客様にも社員にも説明して、ペルシャ絨毯部を作りました。
今はほとんどの店舗で、毎年1~2回の展示会をしています。
イランの職人さんに来てもらって、作るところも見せるんです。
湯浅
作るところから!
御社のターゲット層はいい家具を安く買いたいというお客様ですよね。ペルシャ絨毯という高価なものを売るのは、ターゲット層が異なるのかなと思いました。そんな中でペルシャ絨毯の事業に踏み込んでいかれたのは、思いが強かったからなのでしょうか。
杉浦
そうですね。なんで扱っているの?とも言われます笑
湯浅さんはペルシャ絨毯のことをどれくらい知っていますか?
湯浅
私自身全然知識がないですね。
杉浦
見たことない人だっているんです。そういう人も本当に気に入れば一生使ってくださいます。
いい絨毯は200年、300年と使われるんですよ。
そう考えると意外と安いので、世界中の人がペルシャ絨毯を大切に使っているんです。
だからこそ、一般の方々にも知ってもらいたいと思っています。
湯浅
杉浦様の思いが伝わって、購入につながっているのですね。
私も興味がわいてきました。家の近くにも店舗があるので見に行ってみたいです。
原動力は好奇心
湯浅
杉浦様の家具やペルシャ絨毯への思いの強さを感じていますが、挑戦に対する原動力もそこから湧いているのですか?
杉浦
好きなことをやるときって勇気が出ますね。嫌いなことをやるときは不安が大きいです。
特に若い人に言いたいのですが、条件ばかりを考えなくてもいいです。何とかなります。
好きなら、苦しいことも苦しいと思わないんです。周りには少し迷惑をかけるかもしれないけど、
多少失敗しても生きていけます。
湯浅
熱いメッセージにすごく感動しました。私の周りにはやりたいことが見つからないという人が多いのですが、どうすれば見つかるのでしょうか?
杉浦
好奇心じゃないですか?なんでも知ろうとしないと。知らないと好きにはならないです。
ペルシャ絨毯でもなんでも、物の価値がわからないと欲しくならないでしょう?
製法、材料、分かったうえで欲しくなりますよね。
湯浅
なるほど。好奇心をもって勉強する、調べることが大事なのですね。
私ももっといろんなことに興味を向けていきたいと思います。
2021年、生まれ変わった業態へ
湯浅
杉浦様が挑戦なさったことで印象に残っていることはありますか。
杉浦
そうですね…、今やっていることでしょうか。アウトレットには2種類あるんです。
1つは、ファクトリーアウトレット。自社の商品の売れ残ったものを自社で売る形です。
2つ目がリテールアウトレット。これは商品を作らず、いろんなメーカーから仕入れて1つのお店で売る形です。私は1990年にリテールアウトレットとしてスタートしました。
湯浅
早い段階で新しいことに挑戦されたのですね。
杉浦
ところが30年たってアウトレットの定義がファクトリーアウトレットになったんです。
30年やってきたんですが、言葉とやっていることが合わないんです。
そんな時、アメリカに行って、オフプライスという業態を見ました。
ものすごく成長していて世界で350兆円の市場があるんです。
湯浅
350兆…、すごいですね。
杉浦
アウトレットとよく似ているものです。オフプライスは工場や商社からだけでなく、デパート、小売店も仕入れるんです。デパートで仕入れたもののうち、何%くらいが廃棄になっているか知っていますか?
湯浅
うーん、ちょっと想像つかないです。
杉浦
アメリカでは40%くらいだったんです。
でもアメリカでは捨てるのではなく、オフプライスのお店でもう一度販売しているんです。
それで当社も小売店から仕入れを始めて、2021年にオフプライスに業態を変えました。
湯浅
そうだったのですね。杉浦様のSNSに、2021年3月にオフプライス業態に進化と書かれていたことを拝見していて、気になっていたのでお話を聞けて良かったです。
杉浦
地球の資源を大事にする動きも含めて、モノと価格が合うように販売するんですね。
そうすることで世の中のためになる業態だと信じています。
湯浅
かなり画期的な業界だなと改めて感じました。
杉浦
すごいでしょう。8年後には650兆になるっても言われているんですよ。
ネット販売にはこだわらない
杉浦
ところで、オフプライスってネットでは販売しないんですよ。
ネットで売るためには商品の写真を取ってアップして、説明を書いてって必要じゃないですか。
一点物のためにそれを用意するとなると、ものすごい手間ですよね。
店舗でたくさん売れているからその手間は必要ないんです。
湯浅
確かに扱っている商品の特徴を考えても、商品の入れ替わりが早いことが考えられますものね。
杉浦
アパレルでは1週間に1回で全部入れ替わるくらいなんですよ。家具は半月くらいで入れ替わりますね。
湯浅
アパレルよりも高価だからですか?家具でも2週間で入れ替わるのは驚きです。
杉浦
それもそうですが、家具の場合はネットだと送料がものすごくかかるんです。
玄関先に置かれるだけでなく、設置までしてほしいと思うでしょうからネットが向かないのかもしれません。
湯浅
ネット販売が主流になっているからと言って、ただ追従するわけではないのですね。
杉浦
ネットでも売ってはいますが、全体の売り上げの1%です。アウトレット商品を売るわけなので、
実際に触って、確認してもらってお売りする。なおかつ店舗で買っていただくと自社の配達便がありますし、引き取りサービスもあります。ネットで買うといらない家具を持って帰ってくれるシステムは
ないですからね。
湯浅
そこもネット販売との違いなのですね。
やはりオフプライスって画期的ですね。ネット販売が普及している中で実店舗で勝負して、
市場も大きくなっていくというところで、学生からしても魅力的な市場だと感じました。
目指すは200店舗
湯浅
そういう成長性のある業態をなさっている御社で、今後どういった目標を掲げていらっしゃいますか?
杉浦
全国展開です。200店舗はほしいです。今の約3倍以上の店舗にして全国のお客様にオフプライスの商品を提供できる会社になりたい。そうなると今の3倍の店長も必要、エリア長も必要ですよね。ぜひ若い方に入っていただきたいと思っています。
湯浅
全国展開200店舗を目指されている中で、今の従業員の方に求めていることはありますか?
杉浦
まずは店長になってもらえる人材育成です。店長はヒト、モノ、カネの管理ができないといけません。
モノとお金の管理はすぐにできるようになりますが、難しいのは人の管理です。人を大事にして守って、
モチベーションを上げられる人間でないと店長にはなれない。みんながついてきてくれないと店長一人が
頑張ったって無理ですよね。そう思って人材育成をしています。
今、学生に求められること
湯浅
みんながついていこうと思えるような人材になるために、今若者がどういうことをしていれば成長できますか?
杉浦
まず、自分中心的な考え方は辞めてもらいたい。自分さえよければという人はリーダーにはなれないです。
湯浅
杉浦様がほしいと思う学生、全国展開をするうえで魅力的な人物像も他人を顧みることができる人なのでしょうか。
杉浦
そうですね。例えば、朝「おはよう、体調大丈夫?」とか声をかけられる人、気遣える人はみんなを大事にできるので、人がついてきます。能力がどうではなく、人間性ですね。
学生のうちにボランティアやサークルに参加しておくといいんじゃないんでしょうか。
湯浅
そういう活動を積極的にすることが大事だと考えられているんですね。
杉浦
基本的には元気な挨拶ができる人、これは最低限ですね。挨拶って心を開く行為なんです。これが元気にできればたいていのことは身につきます。
湯浅
基本的なことですが、元気に明るくできているかと考えると微妙なところがあるかもしれません。人についていこうと思ってもらえるような第一歩ということですね。私からの質問は以上なります。
本日はありがとうございました。
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