広島大学3年生
汪 源
株式会社ビックボックス
手塚 大介
学生と経営者がお互いに意見交換をしながら、相互理解を深めるHRsessionの対談コンテンツ。
今回は、株式会社ビックボックスの代表取締役社長 手塚 大介様に、お話を伺いました。
広島大学経済学部。大学生活では、JAZZ研究会と囲碁部に所属。毎日サックスを吹かないと禁断症状が出る。趣味は銭湯とサウナめぐり。2023年10月からドイツに留学予定。
1972年9月生まれ。50歳。大学卒業後、大阪、東京の設計事務所に設計者として従事し1999年1月に株式会社ビックボックスへ入社。 2008年6月取締役社長に就任。2022年2月に代表取締役社長に就任し、現在に至る。
目次
汪
本日はよろしくお願いいたします。ホームページからとても遊び心のある社風を感じましたので、是非そのあたりについても詳しく聞かせていただければと思います。
手塚
よろしくお願いいたします。私は、約25年前に就職して、15年前に社長になりました。今は社長ですが、営業、開発、設計、プレゼン、海外取引における海外の方との交渉というようにログハウスを通じてあらゆる面に働きかけています。建築がずっと好きで古い建物から近代的な建物まで見て回るのが趣味なので、仕事も趣味の延長線上にあるかなという感じです。
汪
そうなんですね。御社には新卒でのご入社でしょうか。
手塚
違うんです。実は私、大阪の温浴施設に就職したんですけど、1年半でその企業が倒産してしまいました。今となったら笑い話なんですけど、朝起きたら「取り立てが来るから逃げてください」って社長に言われて、同期のみんなで冷蔵庫からパソコンから背広まで全部持って慌てて社屋内にあった寮を出たっていうのは未だに鮮明に覚えています(笑)
汪
そんなことがあったんですね。
手塚
やむなく地元の宇都宮へ帰ってきたけど、就職難でなかなか自分がやりたい設計の仕事に就けないような厳しい時代だったんです。そんな中、たまたまビックボックスが募集をしていたので、設計で入社しました。9年半くらい経ったときにふと前会長に呼ばれて「社長にならないか」と言われました。
汪
そんなに突然だったんですね。
手塚
はい。だから、最初は右も左も分からない状態で。設計という仕事が好きでやっていたけど、どこまでログハウスに執着できるかという部分は意外に割り切ってやっていた部分もありました。社長という立場だと、色々な商品に触れていく中で単純にログハウスって丸太小屋だけじゃないことに気付くんです。皆さん、山小屋にある丸太小屋っていう印象があると思うけど、実際に今の最先端のログハウスって全く丸太小屋っていう感じじゃなくてモダンな輸入住宅なんですね。
ログハウスならではの特長を生かした事業展開
汪
先ほど当初ログハウスはこういうものだと割り切っていたと仰っていましたが、具体的にはどのように割り切られていたのですか。
手塚
私は一級建築士なので、当初はRCでも鉄骨でも普通の在来建築でも、なんでも良くて...。デザインするってところに着眼点をおいていたんですよ。だから、建築家からするとログハウスはひとつの構造体でしかないんです。でも当然それをメインにしている企業なので、ある時からログハウスを広めよう=ログハウスに特化してデザインすることでログハウスの超スペシャリストを目指そうと考えるようになりました。
汪
なるほど。
手塚
コロナ前の5.6年で、30棟くらいのログハウス建築群の建設や巨大リゾートホテルからログハウス建設の依頼をいただいて、ほかにも複数の大手企業からキャンプ場の建設の依頼をいただくということが続きました。大手法人さんが注目してくれる案件が結構あることを考えると、ログハウスならではなのかな?と。ならばログハウスに特化し、例えばデザイン性や健康効果というログハウス特有の切り口でやっていくべきだなぁと感じて、今は事業展開しています。
伝えたいログハウスの真の魅力
汪
手塚社長が実際に就任された後、自らがこのビッグボックスを率いていく立場になった時にどのようなポリシーを持たれて活動されていたんですか。
手塚
先代のポリシーは、ログハウスはデザインや彫刻という美的・アート的建築としてログハウスと真摯に向き合うことでした。そのためデザイン力に重点をおいてきたんですね。私は、自分らしさを出していこうと思うんです。ログハウスの健康効果について専門誌で知りました。その影響を受けて、私、2019年に自分の家を設計したんです。
汪
そうなんですね!素敵ですね!
手塚
フィトンチッドというログハウスの木の香りがウイルスや腐食させるカビ、細菌を滅菌するんです。また、記事によると、フィトンチッドによって体の血のめぐりが良くなるので、脳の血のめぐりも良くなって頭がさえて集中力が増したり、フィンランドだと保育園は木造の方が成績が良かったりするんですって。
汪
そんな効果があるんですね。
手塚
実はログハウスのシェア25%を持つフィンランドでは、ログハウス=ヘルシーと捉えていて健康というテーマで家を見てるんですね。 ちなみに10年前はシェアたった10%だったんです。健康住宅ってあるけど、ログハウスってもう明らかに木に囲まれているから健康じゃないですか。
汪
はい、そうですね。
手塚
私もログハウスをアカデミックに研究しながらもっと広めていくっていうのが、メジャーにするための近道だと思いました。また別の雑誌でもログハウスのすごさを思い知らされたんですが、木の環境が、体の免疫力を上げたり、頭をクリアにしたりするから良いっていうのを見たんです。
汪
そうなんですか。
手塚
その当時、これはなんとか一般の人たちに知っていただきたいなぁと思って自分の家も実験的に木で建てたんですよね。 以前の住居で私は毎年9月頃になると腰がしびれたりしていたんですけど、ログハウスに引っ越してからは腰の症状はまったく出ませんでした。徐々に知り合った方がログハウス建てたいっておっしゃるようになったんですが、ある時久々に会ったその方に「なんか社長若返ったね」って言われたんですよ。
汪
すごいですね!
手塚
もっと面白いのが、ビックボックスで2年前にログハウスを建てた70代の女性も「ここ1年でどんどん若返っちゃってるよ」って言ってて、最初の頃は髪が真っ白だったのに今はグレーになってるんです。人ってお金で若さは買えないし、不老っていうテーマがあるかもしれないけど不老じゃなくて若返るってすごいなぁって思うんです。
汪
それはもう不老を超えていますね。
手塚
だから、究極の健康住宅っていうテーマでそのすごさが日本にわかるような環境や接点があれば面白いなと思っています。ちなみに千葉大学の宮崎教授という方の人体実験では鉄、アルミ、ステンレス、タイル、木を触ると、木のリラックス効果が最も高くて、他の方の実験では、マウスをコンクリート、木、鉄の箱に入れると、10日後には木の箱は9割生きているに対して、鉄の箱は2~3割、コンクリートの箱は1割しか生きていないんですよ。
汪
へぇ~!
手塚
マウス実験からも木の箱が長生きするというのが明らかなんですよね。今はエビデンスの時代なので、データをどんどんクリアにしてきながら木の環境の中で体を活性化させるという効果をより知ってもらって住宅の環境を変えていけたらいいのかなというところが最近の自分の課題でありポリシーですね。
着実にファンをつけて住環境を変えたい
汪
ホームページでは、私自身グッと心を掴まれるものがありました。ログハウスは健康的で、デザインも美しいですし、自分としては遊び心も感じます。一方、あまり認知度が高くないとも感じております。今後手塚社長はどうやって認知度を上げてログハウスを広めていきたいと考えてらっしゃるんですか。
手塚
やっぱりログハウスというキーワードは皆さん知っていると思うんだけど、それが家として建てられるということをわかってないっていうのが多くて...。実際に本当の良さが認知されていないんです。
汪
そうなんですね。
手塚
例えば、街の中だったら木なんか燃えちゃうからダメだと思う方多いけど、実はこれ不思議な話で燃えないんですよね。
汪
あ、そうなんですか!
手塚
そうなんですよ。例えば、バーベキューで火をおこす時ってなかなか炭や薪に火がつかなくて固形燃料やオイルをつけて火をおこすじゃないですか。
汪
確かに、そうですね。
手塚
木って単純に燃やしたところで燃えないんですよ。だから実はそういった認定をとって東京23区内でもログハウス住宅を建てたりしてるんです。
汪
そうなんですね!
手塚
そうなんです。更にいうと、東日本大震災でも全然壊れなかったんです。なぜかと言ったらログって丸太を交差に組んで1本1本積むので地震によって揺れても揺れを吸収するんですよ。
汪
すごい!
手塚
耐火性も耐震性も優れ、体に良いって本当はすごいんですが昔の丸太小屋の認識があって、家として住もうというところに至ってないんだと思います。昔なら大手企業がCMで広告を出した時代ですけど、今は個の時代なのでコツコツSNSで告知しながら、大手法人さんが建てるならうちもやってみようかなとを狙っています。急にバズるということがあればいいけど難しいので、大手法人さんの依頼に着実に応えていくことでしっかり広めていこうかなと思っていますね。
汪
認知度アップのために取り組まれていることはありますか。
手塚
メディアには積極的に出ています。例えば、芸人さんとログハウスを一緒に建てるっていう企画をやると、一瞬的には広まるけど、継続的には広まらなくて、家って何千万の買い物なので瞬間的なバズりだと買おうとはならないんですね。家を建てるタイミングでログハウスを選択肢に入れるためには、やっぱり中長期的にじわじわ育ててくことが必要なので、時間をかけないと無理かなと思うんですよね。瞬間的なバズりが何回もないと広がっていかないと思うので、企業としてこういう機会や様々な法人さんと出会う機会で着実に接点をもって拡大させてくというのが実際の近道だと思っています。
汪
やっぱり一軒家を建てる時に多くの人が普通の建築物をイメージすると思うんです。そこにログハウスという選択肢もいれてもらわないと同じ土俵にたてないんじゃないかと思ったんです。勉強不足で申し訳ないんですが、その点手塚社長手塚さんはどうやって選択肢の一つに入れてもらおうと考えてらっしゃいますか。
手塚
例えば、ちょっと前に不動産情報サイトでビックボックスを登録してみると全国からすごいカタログ請求がくるんですよ。今も代理店が90社ほどあってカタログ請求がきても意外にそこから受注にならないんです。
汪
なるほど、そうなんですね。
手塚
ちょっと考え方を変えると、ビックボックスはバイクで言うとハーレーダビッドソン、車で言うとフェラーリやアルファロメオというようにちょっとニッチなマーケットだから問い合わせがきてもなかなか購入いただけないというのがあるんです。でも、それが本当に好きな人になると競合が少ないので迷いなくご依頼いただけるんですよね。
汪
そうなんですね。
手塚
あとは、家を名前や安心感で選ぶ方がかなりいらっしゃることもあり、まだまだ右にならえの風土を持つ日本人にとってログハウスは珍しく、なかなか購入にまで至らないんですよね。
汪
そうですか!
手塚
変えていくにはもっと努力が必要なんです。例えば、非日常の世界としてログハウスに泊まって、ログハウスってすごい気持ち良いなとか、ぐっすり眠れたなと感じてはじめて、こういう家という選択肢もあるのかなぁと思わせる環境を増やすことが大切だなと思っています。今、実際にコロナ禍や少子高齢化もあって住宅の着工数も非常に減っていて、どちらかというと住宅よりB to Bのホテル、レストラン、カフェにログハウスというニーズが増えているので、そういった不特定多数の特殊建築物のオーダーに応えてどんどん建てていく中で、ログハウスって家もあるんだというアプローチで良いかなと思っています。
汪
納得感のあるお話でした。実際に不特定多数の方にログハウスを体験してもらう感じですね。
手塚
そうです。そこで建築というものをリアルに感じられると思うんですよね。
相手を主語にして考える
汪
手塚社長が大事にされていること、社員さんへ思いを聞かせいただけますでしょうか。
手塚
本当はお客様とは対等ではないけど、ログハウスに住んでもらうことでログハウスを共有する家族のようになっていく関係づくりを意識してほしいです。
汪
家族ような関係ですか。
手塚
はい。そういった意識や関係づくりが大切です。私たちは一戸一戸を真剣勝負でつくっているんですよね。そして、ご家族やお客様にも想いがあるんですよ。 景色を楽しみたい、温かい部屋が良い、中にはお風呂はラグジュアリーにしたい、照明にこだわりたいなど、家を建てる場所によってテーマが全然違うんですよね。そのテーマに沿ってお客様と家をつくっていくわけです。
汪
なるほど、一戸一戸お客様の想いも違いますもんね。
手塚
そして、立ち位置は社長だから重要な決定権を任される立場だけど、時には私自身も社員のみんなと設計も、デザインも、営業もやるので、上からトップダウンで指示するのではなく、一緒に横並びにすることでチームとしてお客様の想いに応えるということをしていきたいですね。
汪
アットホームで和気あいあいと取り組まれているんですね。先ほど実際に営業も行っておられるとうかがいましたが、相手の気持ちの汲み取り方や厳しいお言葉を頂いた時、マインド調整はどうされているんですか。
手塚
あまりプライドを高くしないことが大切です。うまく進まないときにはすぐ謝っちゃうとか、そうすると結構打ち解けるんですね。あとは、相手を主語にして考えるということが大切です。
汪
相手を主語に。わかりやすいです。
手塚
良かれと思って提案しているという思いが伝わると、この人に任せて良かったと思っていただけるんです。競合が何社あったとしても、もう他社に依頼をするようなことにはならないんじゃないかと思います。
汪
参考にさせていただきます。やりたいことだからというのがモチベーションになっているのでしょうか。
手塚
そうです。まだ叶ってはいないですけど、やりたいことを仲間に話していくうちに現実化するっていうのを最近よく感じるんです。だからこのスタンスでやっていけばやりたいことが実現していくんだなと思います。
汪
なるほど。
手塚
やりたいことだけに時間を集中させるので、毎日休みなくやっているかもしれません(笑)。 趣味の延長線上に仕事もあるので、自分では働いている意識はないですね。夜寝るまで、良いデザインあるかなとか頭の中グルグル回っています(笑)
まずは、熱をもって粘り強く食らいついてほしい
汪
手塚社長はどういった学生にビックボックスに入社いただきたいですか。
手塚
ログハウスを好きになれるかです。
汪
ログハウスを心から好きになって営業や設計をするということですね。
手塚
そうです。だから、皆には設計で入りたいって言っても営業、管理、企画もあるよって言うんです。いろいろな業務を体験していくことで初めて一人前になるので、営業しかできない、設計しかできないだと自分のフィールドを狭くしていると思うんです。頭が良い悪いじゃなくてログハウスをどんどん広めたいという思いが必要かなと思います。
汪
最後に、手塚社長から就活生のみなさんにメッセージをいただけませんでしょうか。
手塚
石の上にも三年って言葉があるように新人の方には一か所のところで9年は頑張れって言っているんです。自分の予定と違ってこういうつもりじゃなかったって転職してしまうとか、給料の良い企業に転職しようという時代かもしれませんが、どこかで我慢強く、粘り強く、くらいつくことも大切かなと思います。私も前会長がかなり厳しい人で、自分の中ではそういう厳しいことの連続によって今があると思うと、感謝しているんですよね。
汪
そうなんですね。
手塚
あとは良い人と出会うってことかな。縁も運も大切だけど、やっぱりさまざまな人と会話しながら、その場ですぐ判断しないで付き合いの中で得るものもあるから、そこを大切に生きていくと人生が豊かになるんじゃないかなと思います。すぐに良い悪いを決めて逃げ出さないで耐え続けたから今があるかなというのはすごくあります。
汪
言葉の一つ一つが心にしみます。本日は素敵なお話を聞かせていただいてありがとうございました。
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