同志社大学4年生
山下 実桜
大日コンサルタント株式会社
市橋 政浩
学生と経営者がお互いに意見交換しながら、相互理解を深めるHR sessionの対談コンテンツ。
今回は、大日コンサルタント株式会社の代表取締役社長 市橋政浩様に、お話を伺いました。
同志社大学商学部。2022年4月より株式会社クイックで就業予定。就活ではコンサルティング業界、人材業界を中心に活動。大学では、IT系ベンチャー企業でのインターンシップに参加経験あり。趣味はゴルフ。休日は早起きし散歩をして過ごすのがルーティーン。
1975年5月生まれ。47歳。大学卒業後、株式会社長大に入社し技術者として従事。2008年9月に大日コンサルタントへ入社。交通計画の技術者を経て、2013年に取締役に就任。2020年に代表取締役社長に就任し、現在に至る。
目次
山下:
本日はよろしくお願いいたします。初めに御社の事業についてお伺いしても良いでしょうか。
市橋:
総合建設コンサルタントとして、地元の岐阜県はもとより、日本全国、アジア圏を中心とした海外などのインフラ整備に関わっています。
山下:
インフラと言うと、道路や橋梁、トンネルなどでしょうか。
市橋:
そうですね。最近は業容を広げていきたい想いもあり、インフラ整備から派生して、街づくり、そこに連なる観光事業などにも関わりを深めています。事業を説明する際にも、実は3年くらい前から、総合建設コンサルタントから「総合コンサルタント」と、建設を抜いてお伝えするようになっています。
山下:
コンサルと聞くと、御社の場合だと設計をするまでを請け負う印象を受けますが、街づくりや観光など、
よりユーザーの生活に近い領域まで踏み込んで支援されているんですね。
若い頃のハードワークは無駄ではないが…。
山下:
市橋様が代表になられたのはつい最近で、2020年だと思います。就任の経緯を教えていただけますか。
市橋:
弊社はいわゆる同族経営の企業でして、創業者が私の祖父になります。とは言え、いきなり社長になる
ことはできないので、東京にある同業の会社に就職し、10年ほど修行をして戻ってきました。
山下:
市橋様が代表になってから、意識されていることや変えられたことなどはございますか。
市橋:
これまでは従来型の土木や建設の仕事が豊富にあったので、単純に技術を磨いていくことで会社も成長してきました。ただ、5年後、10年後の未来を考えると、これまでの経験を活かしながら、外部の新しい技術とどうマッチアップしていくかも重要になると考えており、積極的な取り組みを推進しているところです。
山下:
東京で勤務されていたときの経験も取り入れながらですか。
市橋:
前職も同じ業界だったものですから、弊社と比べてどちらが新しいということはありませんが、外に出ることで見識は広がりました。今、社長として、地方にある弊社がどう成長を描いていくかを考える際の土台になる経験ができたと思います 。
山下:
まさに東京でお仕事されていた時期、特に20代前半で、市橋様がこれをやっておいて良かったと感じる経験はありますか。
市橋:
やっておけば良かったと、後悔することは山ほどありますね(笑) やって良かったことは…、当時は今と
違って根性論が主流で、3日、4日徹夜するくらい身体的にも精神的にも厳しい時代だったのですが、
そのキツい経験は、今振り返ると、経験しておいて良かったかもしれません。
山下:
いろんな企業の社長様にお話を伺うと、若い頃のハードワークの経験を語られる方が多いです。世間では、
ワークライフバランスが大事と言うものの、やはり自身の能力を伸ばすためには、若い頃くらいは、
寝ずに死に物狂いで働いたほうが良いのではないかと、学生同士で会話したりすることも、正直あります。
市橋:
今はやっぱりそれは難しいし、そこまでやる必要はないと思いますよ。でも、若い頃の経験があったからこそ、少しくらい厳しい状況におかれても、あの頃のキツさに比べれば…と心に余裕を持てるのは確かですね。
建設築・土木から、街づくりへ。新卒の募集枠も拡大。
山下:
新卒募集が全学部学科になっているのは、今の未来像のお話とも関係があるのでしょうか。個人的には、建設系の学生を中心に採用しているイメージがありました。
市橋:
おっしゃる通りです。建設土木って、物理や数学的な要素がありますから、確かにこれまではそういう採用でした。ただ、人口減少社会のなかで、私たちに求められる役割が設計だけでなく街づくり全体に拡大していくと、法律知識だったり、投資する際のファイナンスの知識だったり、いろんな専門家が協業して価値を提供する必要がでてきます。それでいろんな学部の学生さんにも声をかけさせていただいています。
山下:
私が就活のときに見た同じような企業は学部不問ではなかったので、その背景が伺えて良かったです。
市橋:
道路や橋梁、トンネルを作っても、そこを行きかう人々の動きから生まれるお金って、土木じゃない世界でのことだったりするんですね。だから弊社は土木を入り口に、より生活者に近い世界まで入り込んで一気通貫でサービス設計することで、実行のスピード感をあげたり、より便利になったりといった付加価値を提供していきたいと考えています。
ガクチカの「売上〇%UP」エピソードの落とし穴。
山下:
求める学生は、どちらかと言うとサークル活動やアルバイトに力を入れていた人よりも例えば法学部であれば法律の勉強とか商学部の学生であれば貿易や小売なんかの勉強を重点的にやっていた学生が求められるんでしょうか。
市橋:
大学での学びの期間は4年から6年です。一方で社会人としての学びは40年以上あります。大学で学んだ知識だけで、その後ずっと専門性を発揮し続けられるかと言うと、それは難しくて、入社後にも興味関心を持続させて努力する必要があると思っています。だから私たちは、頑張りや結果それ自体よりも、その裏側にあるやり抜くための意思の力を見ていたりします。
山下:
面接でガクチカ、学生時代に頑張ったことはよく質問されます。単に想いを語るのではなく、「アルバイトで、店舗の集客が〇%伸びました」のように数字で説明するようにしている学生は多いと思いますが、あまりそこは重要ではないということですか?
市橋:
数字は見せ方次第でどうにでも表現できると思っていて、たとえば成績を表すGPAのように個人の努力がそのまま数字になるものであれば素直に評価できます。ただ、売上があがったという話は、その人だけの努力ではないですよね。他のスタッフの功績が大きかったかもしれないし、意図せずたまたま結果が出ただけのことをエピソードとして語っているかもしれません。面接であれば、その点は注意深く聞いていきたいところです。
山下:
確かに言われてみるとそうだなと納得してしまいました。これまでは数字が個人の実力かそうでないかを
意識できていませんでした。これは就活中の学生にも、絶対知ってもらいたい観点だと思いました。
ガクチカでは、達成できなかったエピソードにも価値がある。
市橋:
さらに言うと、「〇〇を達成しました」というエピソードを話す人は多いけど、面接する側からすると、
逆に達成できなかったエピソードのほうが、印象が良くなることがあります。
山下:
達成していないほうが、印象が良いんですか!?
市橋:
社会人になったら目標を達成できることのほうが少ないです。だから、できなかったときにその事実を
どう受け止めたか、どうリカバリーしたかという一歩先の想いこそ、私たちは聞きたいと思っています。
山下:
8~9割の学生は目標に対して頑張って達成したことしか評価されないと考えていると思うので、今の話は
驚きがすごいです。ありがとうございます
市橋:
社会の中では、挫折感を知っている人のほうが強いですし、それを面接で堂々と語れる人は、失敗を経験として昇華できているとも感じますね。
準備してきた回答は、面接官にほとんど見抜かれている。
山下:
せっかくなので面接についてもう少し伺いたいです。御社の選考フローの中で、さきほどのようなエピソードを引き出すために、具体的にどういう質問をされるのでしょうか。
市橋:
けっこうストレートに聞きますよ。失敗した事例を教えてください、と。あとは私たちの仕事が人と人の
つながりや交渉事が多いものですから、意見が衝突したときにどう対応しましたか、というような実体験のお話も伺います。
山下:
その対応の仕方で合否がわかれたりしますか。
市橋:
合否というよりタイプを見ています。たとえば、苦労を乗り越えたときに、そのアイデアはどうやって出したのか。一人で考えぬいたのか、みんなの助けを借りたのか、チームで話し合ったのか。会社にはいろんな役割・ポジションがありますから、リーダー気質の人ばかり採用しても上手くいきません。サポートが得意な人も必要です。
山下:
最近は、質問を想定してエピソードを用意してくる学生も増えています。私も100%準備して臨むタイプの学生でした。
市橋:
そういうのは聞けば大体わかります。その瞬間、瞬間に出てくる言葉と準備した言葉は全然違います。
変に作りこみすぎると逆に面接に落ちてしまうかもしれませんね。質問に答える瞬発力も評価ポイントに
なりますから。少なくとも、弊社の面接では、自分が体験してきたエピソードを素直に話していただけた
ほうが良い結果になると思います。
山下:
その場で答えを返すのはなかなか難しいですね。
市橋:
瞬間的にパッと出した答えには、その人の人柄が出ます。生まれ持ったものやこれまでの人生で培われた
ものも見えてきます。知りたいのはそこだから、準備していることが分かると、面接する側としては、
その守りを切り崩すために質問しがいがありますよね(笑)
山下:
準備しすぎると逆に落ちるという発想はなかったです。意外でした。あと、学生時代はそれなりに目標を
達成し続けてきて今があるので、社会人になるとそう簡単にはいかないと知って少し怖いなとも感じま
した。
市橋:
怒られるものだ、失敗するものだと思って社会に飛び込んだほうがいいです。全部成功すると思っている人の失敗ほど、重い挫折になって心身に響きますから。そんなものだと受け入れながら、少しずつ自分を強くしていく姿勢が大事です。
挫折経験のない社会人はいない。
山下:
ちなみに、市橋様が社会人になってから、今までで一番大きな挫折は何ですか。
市橋:
社会人になって5年目のときに国の機関に出向して働く機会があったのですが、そのときですね。クライアントから怒られるし、同僚にも冷ややかな目でみられるし。会社の実力を自分の実力と勘違いしていたことを思い知らされました。
山下:
今、お話されている姿からは想像ができないですね。
市橋:
学生さんから見れば立派に見える先輩社員や経営者でも、多くの人は何らかの形で挫折を経験してきていると思いますよ。いろんな経験があるから人間の幅が広がります。もちろん、辛いことだけじゃなくて楽しい
こともです。好きなことに熱中するタイプの経営者は多いと思います。
山下:
そうなんですね。
市橋:
もっと簡単に言えば、経営者には、とっつきやすくて一緒にいて安心できるタイプの方が多いですよ。
そこには仕事だけでなく、人生経験の豊富さも含まれてくるのだと思います。
山下:
一緒にいて落ち着く人は、私の場合、たとえば友人などであれば似た者同士になってしまって、
それは違うような気もします。
市橋:
仕事においての関係だと少し変わるかもしれませんね。上司部下の関係であれば、部下の仕事を受けとめられる器の大きさや的確なアドバイスができること。いざというときに安心して相談できる心理的な安全が保たれていることも大事です。
山下:
内定先の先輩社員の方を思い浮かべたら、市橋様のお話されていることが具体的にイメージできて理解
できました。
市橋:
友達関係と違って、社会に出ると、こちらから働きかけないと仲良くなれない人もたくさんいます。それぞれの人の個性を理解し、勘所を押さえられるかは、ある程度、経験や技術が試される部分ではないかと思います。
安心感を醸成するための第一歩は、社員の声を聴くこと。
山下:
お話いただいたような安心感を作るために、個人の心がけではなく、会社として取り組まれていることはありますか。
市橋:
私が社長になったタイミングで、管理職全員にヒアリングをしました。一緒に会社を作っていって欲しいと伝えた上で、思っている事、考えている事について意見交換しました。あとは目安箱の設置です。会社に
対して思うことを自由に投稿できる仕組みを用意しました。それを使えば、入社して間もない新人の方
だったとしても、ダイレクトに私や管理部門にメッセージを届けられます。
山下:
どんな意見が届くんですか。
市橋:
業務に直結する真面目なものから、自販機の品ぞろえを変えて欲しいみたいなものまで幅広いですよ。
山下:
そんな気軽な意見もあるんですね。確かにそれを聞くと、風通しが良さそうな感じがします。
ただ、私だったら入社して1年目に送るのは躊躇してしまうかもしれません。若手からの投稿もありますか?
市橋:
確かに遠慮している人はいるかもしれませんね。でも、中には先輩にお願いして、先輩を通じて相談を
送ってくれる人もいるので、勇気を出して意見を発信してくれるのは非常にありがたいなと思っています。サポートしてくれている先輩社員にも感謝したいです。
業界イメージは、あくまでイメージでしかない。
山下:
今日、お話させていただいて、ものすごい勢いで、私の中の土木や建設業界のイメージが変わっています。
市橋:
弊社の考え方がすべてではないので何とも言えませんが、同じ業界のなかでも、社風や経営戦略は千差万別だと思います。
山下:
御社の風通しのよさや新しい施策に取り組むフットワークの軽さなど、業界で働く知人から聞いた話と
比べて印象が違っており驚きました。
最後に、市橋様が大切にされている考え方と言いますか、座右の銘のようなものがあればお聞かせいただけますか。
市橋:
座右の銘は、難しい言葉で言うと「百折不撓」なんです。失敗してもくじけずに志を持ち続ける、という
意味の言葉です。私にとっての志は、仕事を楽しいものにしたいということ。仕事に辛い経験はつきもの
ですが、それを乗り越えて昇華していくためには、仕事を楽しむ姿勢が欠かせないと思っています。
山下:
そのお考えに至った原体験があったりするのでしょうか。
市橋:
若い頃に配属になったチームがあって、そこは非常に賑やかなチームだったんです。外からは、いい加減で遊んでいるようにも見えるくらい。でも、実は社内で一番、生産性の高いチームでした。みんなが楽しんで働いているから意見交換も活発で、とにかく活気がありました。
山下:
社長になられたときに、管理職の方全員とお話されたり、目安箱で意見を吸い上げたりしたのも、
そのお考えと関係あるのですね。
市橋:
そうですね。仕事を楽しむ風土を、全社に波及させていきたいと思っていて、そのためには社員の意見を
聞いたり、日々のコミュニケーションを通じて距離を縮めるのが第一歩だと考えて実施しています。
山下:
本日は貴重なお話をいただきありがとうございました。私のなかでの業界イメージがガラリと変わった体験でした。ぜひこの体験を他の学生さんにも伝えられるような記事を作成できればと思います。本日はありがとうございました。
市橋:
こちらこそ貴重な経験をさせていただきありがとうございました。
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