同志社大学3年生
佐藤 亮
株式会社ホスピタリティオペレーションズ
田中 章生
学生と経営者がお互いに意見交換しながら、相互理解を深めるHR sessionの対談コンテンツ。
今回は、株式会社ホスピタリティオペレーションズの代表取締役社長 田中章生様に、お話を伺いました。
同志社大学3年生経済学部。2023年卒業見込み。就活では人材業界を中心にみている。大学では煎茶道を学ぶサークルに所属していた趣深い一面もある。趣味は筋トレ、映画鑑賞、ドライブ。将来はTRUENOというスポーツカーで彼女とドライブすることが夢(AT免許しか持っていないのに)
早稲田大学卒。大京、三菱 UFJ 信託銀行(出向)、ハドソンジャパンエルエルシーを経て、2005年に株式会社ホスピタリティパートナーズおよび株式会社ホスピタリティオペレーションズを設立し、代表取締役に就任。現在に至る。不動産鑑定士/行政書士/宅地建物取引士。
目次
佐藤:
本日はよろしくお願いいたします。御社はホテル経営に関わる事業ということで、直近ではコロナの影響も大きかったのではないでしょうか。
田中:
そうですね。ただ、全国展開している私たちのホテルは国内のビジネス需要が中心でしたので、インバウンドがメインの都市部集中のホテルと比べれば影響は少ないです。新卒採用も1年間はお休みしましたが、来期からまた採用を再開する予定です。
入社5年で支配人。コロナを経て少数精鋭の採用方針に。
佐藤:
環境が変わったことで、人材に求めるものも変わりましたか。
田中:
以前よりも少数精鋭の採用になる予定です。5年で支配人を任せられる人材を育成する目標を掲げており、支配人のポテンシャルをお持ちの方にご入社いただきたいと思っています。
佐藤:
5年で支配人まで上り詰めるのは急激な成長だと思いますが、何か必要性があってのことでしょうか。
田中:
今後、毎年5~6棟のホテルを増やしていく計画があるので、支配人を任せられる人材の育成が急務となっています。支配人を担えるクラスの人材の獲得競争は非常に激しくなっており、中途採用がそう簡単にはできないため、新卒でいちから育成する戦略をとっています。
支配人に向いているのは、積極的に挑戦して自分の強みを伸ばせる人。
佐藤:
本当に5年で支配人になれるのか、自分自身におきかえると想像がつきません。どんなスキルが必要なんですか。
田中:
入社後はOJTを主体に、まずはフロント業務や施設管理など、一連のホテル業務を身につけます。あと、全国に施設がありますので、開業支援や運営サポートなどを通じて様々なタイプの施設での業務の流れ、お客様への接客経験を養っていただきます。
佐藤:
タイプで言うとどんな方が向いていますか。
田中:
やはりリーダーシップですね。人を引っ張っていく力のある方。たとえば、学生時代に何かのグループでリーダーや部長の経験がある方はいいと思います。
佐藤:
なるほど。
田中:
あと調整力のある方も向いています。タイプの異なるAさんとBさんの意見を聞いて、うまく調和させるようなスキルですね。リーダー経験だけでなく、人と人を結び付ける力に長けた人は有望だと思います。あとは数字に強いとか、ホスピタリティがあるとか、接客のときの笑顔が素敵だとか、そういった要素でしょうか。
佐藤:
やる気のある人には、挑戦させる環境があると採用ページにも書かれていました。ひとことで言えば、積極的にチャレンジして自分の強みを伸ばしていける人材が、御社の求める人物像ということになりますか。
田中:
おっしゃる通りです。当社にはやらないよりはやって失敗してみようというカルチャーがあります。年次が若くても意欲がある方には、どんどん挑戦してもらうようにしています。
佐藤:
採用の時点では、いまおっしゃったような基準を潜り抜けた方に内定を出されると思いますが、それでも入社後の活躍度合いには差が出ると思います。支配人まで駆け上がっていける人には、どんな特徴がありますか。
田中:
いくつかあるのでしょうけど、おとなしいよりは積極性の高い方の方が、上手くいっている傾向はあります。自分を前に出していけるタイプですね。そのぶん失敗もたくさんしますが、トライ&エラーのサイクルが早いぶん成長は速いです。
佐藤:
当てはまる例を挙げるとすると、どんな方がいらっしゃいますか。
田中:
コロナ前の話ですが、飲みに誘われたら絶対断らないことで有名な社員がいましたね。これはお酒を飲める人が偉いという話ではなくて、人との対話にプライオリティを置いている点が素晴らしいという話です。色んな人の意見やアイデアを取り入れながら、上手に仕事に活かしていました。
佐藤:
人と話すのが好きな人の方が向いているんですね。
田中:
はい。もう一人の例もやはりコミュニケーションが得意で、金沢のホテルに転勤になったかと思ったら、そこからあっという間に知り合いが増えて、地域の人脈を作り上げていました。積極的に人と関わる姿勢が大事なのだと思います。
安定して働ける環境を求めて、不動産業界へ就職。
佐藤:
いまのお話をお聞きして気になったのですが、田中社長はどんな新人時代を過ごされたんですか。
田中:
私が新卒で入社したのは、ホテル業界ではなくマンションデベロッパーなんです。
佐藤:
学生のときは接客やホテルのお仕事に、あまり興味がなかったんですか。
田中:
いえいえ。アルバイトとしてホテルの配膳の仕事もしていましたし、スキーが好きだったのでロッジに住み込みで働いたりもしていました。
佐藤:
接客業は好きだったけれど、あえて不動産業界を選ばれたんですね。何か理由があったのでしょうか。
田中:
当時は好きなことを仕事にするよりも、将来のために手に職をつけたいという気持ちが強かったんです。不動産業界は、宅建や不動産鑑定士など色んな資格が取れるので、世の中が変わっても安定して仕事があると考えました。
安定を捨てて起業した理由。人材への想い。
佐藤:
いまの学生も将来の安定性を気にすることが多いです。社長も同じだったんですね。でも、そうだとすると、安定を志向していたはずの田中社長が、リスクを取って起業した理由が気になります。
田中:
実は起業の前にもう一社経験していまして。マンションデベロッパーの次に転職したのは、外資系の不動産投資会社でした。そこでホテル事業を興すきっかけとなる経験がありました。
佐藤:
ホテルの投資案件に携わられたのですか。
田中:
入社当初は不良債権処理やオフィスビルやマンションなどの案件を担当していましたが、既存の不動産の価格が高騰してきたので、新しい投資先としてホテル事業への投資を社内で提案しました。
佐藤:
たとえば、どんな案件を担当されたのですか。
田中:
規模は様々でしたが、中には従業員が1000名を超える大きなホテルグループの再建案件もあって、非常に良い経験をさせていただきました。
佐藤:
外資の企業でホテル経営の面白さを実感されて…、でも独立を選ばれたんですね。
田中:
投資会社の性質上、ホテル再生の視点が短期スパンにならざるを得ないんです。長くても3年以内で売却して、利益を得ることがゴールになってしまう。改善の範囲が限られてしまうことに違和感がありました。
佐藤:
どんな点が改善しきれないポイントだったんですか。
田中:
設備と人材です。どちらも投資してから効果が出るまでに時間がかかるものなので、そこに注力はさせてもらえませんでした。ホテル再生は管理・運用が重要で、そこで働く人のことも含めて長期視点で考える必要があると分かっていながら、当時はそこまで手が出せませんでした。
佐藤:
それで起業を決断されたんですね。
田中:
このまま続けても、日本のホテル業界のためにならないし、だったら自分で起業してやってみようと思いました。
自立心の強い人ほど、活躍人材になりやすい。
佐藤:
ここまでのお話を伺って、改めて支配人を5年育てるという話に戻るのですが、人材の成長を長期視点で考えるとしたら、支配人になった次のステージも用意はされているということでしょうか。
田中:
5年で支配人になると言っても、その段階では支配人としては、まだまだ半人前です。そこからさらに5年くらいかけて、支配人として一人前に成長していきます。
佐藤:
入社して10年経ったその先はどうですか。正直、自分の感覚からすると、10年以上先のキャリアについては、まったく想像ができないです…。
田中:
当社でも10年というのは、一つの区切りだと思っています。説明会などでもご説明していて、最速でいけば10年で支配人としては一人前になれます。その時にこの仕事が好きでもっと続けたいとなれば、より難易度の高いミッションに関わっていただくことができます。でも、他にももっとチャレンジしたいことがあれば転職も選択肢の一つです、と。
佐藤:
そこまで伝えられるんですね。
田中:
いまどき一つの会社で定年まで働く人は、なかなかいないだろうと思います。だから、当社で働く時間を充実したものにしてもらって、仕事を通じて得たものを、次のステージで活かして頑張ってもらいたいと思っています。
佐藤:
そういったお話をされるのは、退職も見据えてスキルを磨くという価値観に共感する、自立心の強い人の方が優秀だから、という意図もあるのでしょうか。
田中:
長く働いていただけるのはもちろんありがたいのですが、結果的に、自立心の強い方のほうが活躍人材になりやすいとも考えていて、そういう採用基準になっているのは確かです。
佐藤:
ホテル経営はオペレーションの要素が強くて、自立心の強い方ほど退屈になりやすい側面もありそうに思います。
田中:
大規模なホテルチェーンで、客室や設備が統一の企画で運営されている企業だとその傾向はあるかもしれません。ただ当社は、ホテルごとに客室数も部屋の間取りも異なります。
佐藤:
たしかにホームページで拝見すると、外観やお部屋の内装も違いますね。
田中:
その土地やホテルの規模に合った経営ができるよう、新しいホテルを立ち上げる際には毎回、プロジェクトチームを編成します。これまでのノウハウを活かしながらも、そのホテルに合った戦略を考えています。
佐藤:
それなりに手間暇がかかりそうですが、規格を統一しないメリットもあるのでしょうか。
田中:
買い取ったホテルの設備をできるだけ活かして運営することで、大きな初期投資をしなくて済みます。大きな借り入れをしないので安定した経営ができ、そのぶん人材育成に注力することができます。
佐藤:
建物に投資するか、人材に投資するか。同じ事業をしていても、考え方が全然違うんですね。
経営理念の「笑顔」に込められた想い。
佐藤:
ホテルごとにオーダーメイドの運営をするのは面白いと感じた一方で、統一された規格ではないからこそ、会社としての一体感や共通の価値観をもって協力し合うのは簡単ではないようにも思います。その辺りはいかがですか。
田中:
当社には「おもてなしで人々を笑顔にします」という共通の理念があります。
佐藤:
スマイルホテルは、そこからネーミングされているんですね。
田中:
はい。スマイルホテルやスマイルリゾート、あと微笑みと幸せでホテルエミシアなど、ブランド名には、私たちの理念が込められています。
佐藤:
サービス業なので笑顔を大切にすることに違和感はありませんが、あえてその点を強調されているのはなぜなのでしょう。
田中:
当グループには、様々なバックグラウンドのホテルが仲間入りしてきます。それぞれのホテルの個性を、活かしながら運営していくのが私たちのスタイルです。多種多様なホテルがあるなかで、共通の想いとして一本横串を通すとしたら、サービス業の基本であるおもてなしの心と笑顔しかないと考えました。
“おもてなし”は、ホテル運営のすべて。
佐藤:
ちなみに、おもてなしという言葉はよく耳にするのですが、御社の中では、具体的にはどんな行動がおもてなしだと捉えられているのか教えていただいても良いですか。改めて伺ってみたいと思いまして。
田中:
改めて問われると深い言葉ですね。おもてなしと言えば、まずは接客の姿勢や言葉遣い、表情などは基礎の基礎です。清掃やシーツ、枕カバーを取り換えるお部屋のセットアップもおもてなしの一部です。お食事もそう。昨今では感染症対策も、ある意味ではおもてなしだと考えます。安全面で言うと、非常時の対策がしっかり取られていることも重要な要素だと思います。
佐藤:
幅が広いですね。
田中:
お客様とのあらゆるタッチポイントは、すべておもてなしだと考えて良いと思います。いま導入を進めていますが、スマホで簡単に予約やチェックインができる仕組みなど、システムの利便性を高めるのもおもてなしになります。
佐藤:
これまで、おもてなしという言葉を何気なく聞いたり使ったりしてきましたが、まさにホテル運営のすべてが詰まった言葉なんですね。
あっという間に時間が来てしまいましたが、ホテル運営や人材育成についての考え方など大変勉強になりました。本日は貴重な機会をいただき、ありがとうございました。
田中:
こちらこそありがとうございました。
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