キーワードで探す

  • 公開日:
  • 更新日:

コミュニケーション力を活かすなら、建設業界という選択肢もある。

  • 建設
コミュニケーション力を活かすなら、建設業界という選択肢もある。

同志社大学4年生

飯田 亮

川元建設株式会社

川元 正和

interview

学生と経営者がお互いに意見交換しながら、相互理解を深めるHR sessionの対談コンテンツ。

今回は、川元建設株式会社の代表取締役社長 川元正和様に、お話を伺いました。

同志社大学4年生
飯田 亮

2022年4月より株式会社クイックで就業予定。就活では人材業界を中心に活動。大学では人材会社のスタートアップで長期インターンにも参加していた。趣味は筋トレ。休日はドライブに出かけるなどアクティブに過ごすのが好き。

川元建設株式会社
川元 正和

1961年大分県佐伯市生まれ。日本大学大学院を修了後、川元建設へ入社し、トンネル現場の施工管理に従事。現場代理人を経て、1987年専務取締役に就任。2000年に代表取締役社長に就任し、現在に至る。

目次

飯田:
事前にホームページで拝見しましたが、トンネルの開通を見たのは初めてで感動しました。爆破のシーンも臨場感がありました。

川元:
ありがとうございます。実際に現場にいたら重低音と振動でさらに臨場感がありますよ。

飯田:
社長は、初めて開通に立ち会ったときのことは覚えていらっしゃいますか。

川元:
覚えています。28歳のときです。私のときは機械で掘っていって、最後にポカンと穴が開いて。差し込んで来た光に粉塵が照らされて、幻想的な光景でした。忘れられないですね。

飯田:
感動的ですね。

川元:
そのとき測量の担当として参加していましたから、計算通りの位置に穴を通せてホッとした気持ちも合わさって、感動はひとしおでした。


学生時代から、経営者になることを意識していた。

飯田:
当時の川元様は、まだ社長ではなくいち社員だったと思います。さきほどのトンネル貫通のお話もありましたが、他にどんなことにモチベーションを感じてお仕事されていたんですか。

川元:
若い頃は、何をするにも全部が初めての体験ですから、何でも面白いと感じていました。モチベーションの源泉は、仕事に面白味を見出すことでしょうね。何か、自分はこれがやりたいというものを見つけないと、どんな仕事に就いても長続きしないと思います。

飯田:
社長は今も昔も、新しいことへの取り組み自体が面白くて、チャレンジの原動力になっているんですね。社会人になる前からもそうですか。

川元:
うちは父親や祖父が会社を経営していましたから、いずれ自分も、経営トップとして旗振り役になることは自覚していました。将来、人を率いることになると分かっていたので、学生時代から学級委員や生徒会に立候補するなど、リーダーシップを発揮する練習のようなことはしていました。

飯田:
それは全然、一般の人とは環境が違いますね。そういう人生を歩んでこられたからこそ、チャレンジしていくことの重要性は感じられていると思いますが、社員の方に挑戦を促すようなことはされていますか?

川元:
建設業は、なかなか個人だけで挑戦が完結しないものだから任せるのは簡単ではありません。ただ、新しい業務に挑戦したいという希望はできるだけ叶えられるようにはしています。たとえば、トンネルが主担当だった人が橋梁に挑戦するようなこともありますよ。


人間関係を作るスキルは、学生時代に磨いておくべき。

飯田:
ちなみに御社では、文系・理系どちらが多いですか。

川元:
ほとんどが文系です。

飯田:
図面を読むなど、理系の知識が役立つこともあるように思います。文系でも問題ないんですか。

川元:
建設系の勉強をされていた方などであれば、入社した最初の1~2年は知識的に優位なこともあると思います。でも、3年もすれば差はなくなります。文系・理系よりも、本人の頑張りのほうがよほど重要ですよ。

飯田:
他に、学生時代の学びで、仕事に活かせることはあるのでしょうか。

川元:
学業そのものというより、むしろ学校生活の周辺に学びは多いんじゃないかと思います。

飯田:
たとえばどんなことですか。

川元:
端的に言うと、コミュニケーションですね。色んな人付き合いをして、人間関係を作る練習をしておくことです。

飯田:
そうおっしゃるということは、できない学生も多い?

川元:
人に物事を伝えるのが苦手な人は多いですね。

飯田:
現場では伝える力が求められますか。

川元:
はい。伝えるべきところは伝えながら、人間関係を保つことが重要です。元請けさん、職人さんの間に入って仕事する立場ですから、人をまとめる人間力は非常に大事です。


礼儀正しく、常識的な人が増えている。

飯田:
御社は、トンネル工事など、規模の大きい工事に携わることが多いです。数年がかりの工事になると、宿舎で共同生活をおくることもありますよね。最近の学生には慣れていない人も多そうです。

川元:
一部の体育会系の方を除けば、いまは学生さんが共同生活を体験する場面は少ないですからね。相手を尊重したり、決めごとをきっちり守ったりという、共同生活をしていく上での作法を学んでいない方は増えています。そこができないと、やはり長続きしないです。

飯田:
他に、最近の若い方と接していて、変わったなぁと感じることはありますか。

川元:
はめを外す人がいなくなりましたね。大昔は、朝までお酒を飲んでそのまま仕事に行くような破天荒なこともあったけど、いまはあり得ないですよね。礼儀正しくて、常識的な人が増えていると感じます。

飯田:
わかります。学生だけの集まりの場ではしゃぐこともありますけど、いまは騒ぐと店から普通に追い出されますし、場合によってはSNSなどネットで晒されたりして、若気の至りが大事になる世の中になっています。そんな環境もあって、目立たないように縮こまっているのかもしれません。

川元:
むかしは若者が馬鹿なことをやっていたら、それを面白がってくれる大人も結構いたけど、いまは違ってきているのかな。いまは特にコロナの影響もあるからね。


建設業界の荒々しいイメージは、過去の話。

飯田:
イメージですけど、職人さんの世界は昔ながらのノリがわりと残っているんじゃないかと思ったりもします。いかがですか。

川元:
いや、それが話を聞いていると、職人さんも変わってきているんですよ。みなさんがイメージするような、頑固で型破りで血気盛んな職人のイメージ。そういうのは、いまの現場では通用しない時代です。昔だったら工事のやり方を巡って力づくの喧嘩になったりすることもあったけど、いまは絶対ないです。暴力は良くないけれど、仕事にかける熱も一緒に失われたような感じで、少し寂しい部分もあります。

飯田:
衝突がなくなったことのデメリットもあるんですね。関連する話でいくと、リモートの世の中になってきて、コミュニケーションのあり方も変化してきたと思います。建設業界でも影響はありますか。

川元:
会議は多くがリモートになりました。体は楽だし、見かけの生産性もあがりましたけど、本当に伝わっているのかという不安は残ります。くだけた会話がなくなって、心が通じ合うという感覚が薄れてきたかもしれないです。それが今後、仕事にどう影響してくるかですね。

飯田:
社員さんとのコミュニケーションも難しそうですね。

川元:
社長になると、悪い情報がなかなか入ってこなくなります。むかしは一緒に食事に行って、くだけた雰囲気になってくると「実は…」と、話が広がってありがたかったんだけどね。飯田君とも、もし一緒に食事に行けたら、もっと一瞬で打ち解けられるんだろうと思いますよ(笑)


「この人、苦手」の感情は、相手にも不思議と伝わる。

飯田:
個人的に、目上の方と話すのがそんなに得意ではなくて悩んでいます。食事会など、いまは仲良くなれる機会そのものが減っているのもあって、どれくらい踏み込んでいけばいいかわからず困っています。ヒントがあれば教えていただきたいです。

川元:
その人の良いところを見つけて、食らいついていくことですね。「この人のこと、苦手だな」という気持ちは、不思議と相手にも伝わってしまうものです。年上の方と関係を築くことに苦手意識があるなら、学生のうちに練習しておくのがいいかもしれないですよ。

飯田:
学生の間ですか。

川元:
大学教授でも、企業の方でも。学生の肩書があれば、わりと気軽に会ってもらえたりするものです。私も大学のレポートを書くために、企業の施設に見学のお願いにいった経験がありますが、非常に丁寧に迎えていただいた記憶があります。これが社会人になると、まずアポをとって名刺を持って…、となってしまうからそうはいきません。


後輩の面倒を見る文化は、受け継がれていくもの。

川元:
目上の人と関係を築くのはハードルが高いと感じる人は、せめて友達のめんどうをしっかり見ることを、ぜひやってみて欲しいですね。

飯田:
友達のめんどうを見る。どういった意味ですか。

川元:
学生時代の関係はずっと続く関係になりますから。表面だけの付き合いじゃなくて、困ったときに助けてあげたり、逆に助けてもらったりという、お互い様の関係になるということです。人と絆を結んだ経験は、きっと将来にプラスになると思いますよ。

飯田:
御社の社内でも、後輩の面倒を見る、世話をするという文化はあったりしますか。

川元:
ひとつ例を挙げるとしたら、ベトナムから受け入れている実習生のサポートですね。実習生の第一期生を、親身になって面倒見てくれたスタッフがいました。

飯田:
日本人同士でも後輩の面倒を見るのは大変なのに、言葉も文化も違ってより大変ですね。

川元:
よくやってくれたと思います。仕事だけじゃなく、ゴミ出しの仕方のような生活面から面倒を見ながら、たまに飲みにも連れて行ったりしていたようです。その文化がしっかり根付いて、2期生以降は、1期生の先輩がベトナムの後輩を手厚くサポートするようになって、育成・定着の良いサイクルができました。

飯田:
実習生の方は期間が満了したらどうされているんですか。

川元:
うちの場合は、ベトナムに現地法人を作っていてそこで雇用しています。国へ帰ったら、今度は彼らが先輩・先生として、現地の若者に対して、日本語と建築の教育をするんです。

飯田:
すごい好循環ですね。

川元:
ここに至るまでには、昔に海外のお仕事を請けて、現地のスタッフを上手くマネジメントできず苦しい思いをした経験なんかもあるんですよ。その失敗経験を経たから、時間も手間もかかるけど、実習生を受け入れていちから人を育てる決断ができました。


人材不足は、建設業界全体の課題。

飯田:
国内事業が順調で、海外展開も進んでいて、今後の課題はどんなことを想像されているのでしょうか。

川元:
私たちが事業を伸ばせてこられたのは、直接公共事業に頼らずに、公共工事を行う民間の会社の仕事を積極的に受注して技術と経験を磨いてきたことに尽きると思います。ただ、これから民間の領域においても課題になるのが、人材不足だと考えています。たまにニュースにもなっているので、見たことがあるかもしれません。

飯田:
ベテランの職人さんが高齢化しているのに加えて、僕たちのような若い世代が、建設業にあまり行きたがらないんですよね。

川元:
はい。昔の技術者の方は本当にすごくて、技術的なことはもちろんわかるし、現場をよく知っていて、技術をそれぞれの現場に適応させるための技能も持たれているので、そこが失われると、いままでのように現場が回らなくなるのではないかと危惧しています。

飯田:
川元建設様の役割も変わってきますか。

川元:
変わってくると思います。これまではゼネコンさんに頼っている部分も大きかったですが、業界全体が人不足になってくると、私たちがより上流の領域までカバーできるように企業努力が必要になります。それが将来の競争力につながるはずです。


受け入れる素直さと、取捨選択するしたたかさ。

飯田:
最後に学生にアドバイスをいただきたいのですが、社長は未来を見据えて、変化を楽しまれているように見えます。多くの学生も、分かってはいるのですが、なかなか一歩踏み出せずにいます。どうすれば前進する覚悟が決まるのでしょうか。

川元:
若い方を見ている限りでは、上手くやっている人に共通しているのは、素直さがあることじゃないかな。いったん受け入れてみる、受け入れ力があります。新しいことに対して反発から入ってしまうと、なかなか自分のなかに入ってきませんから。

飯田:
受け入れ力とイエスマンは、紙一重のようにも感じます。両者の違いについてどう思われますか。

川元:
全部にイエスと言う必要はないと思います。自分に取り入れたあとに取捨選択するのはありです。受け入れずに弾き飛ばすことをしなければOKですよ。

飯田:
自分には不要だと判断する力が問われますね。

川元:
確かにそこは難しい。まさにその判断の繰り返しが人生だからね。

私も会社を継ぐ前に、元請けさんのところで修業させていただいた時期がありました。そこで自分にない考え方をたくさん受け入れて、自分に負荷をかけた経験が、いまの社長業を担う基礎力になっていると感じます。

飯田:
あえて厳しい道を選んで負荷をかけるのは、成長に必要なことだと思われますか。

川元:
私の場合は、若い頃に寝る間も惜しんで働いた時期があったから成長できたのは事実だと思います。単なる辛いだけの負荷と捉えるか、勉強・経験と捉えるか、捉え方は大事かもしれませんね。

飯田:
自分の目標に向かって前向きに頑張れると、受け止め方も変わりますね。

川元:
いまの若い人には、会社や上司が負荷を与えない時代になっているから、むしろ大変かもしれないですね。社会に出たら、毎日が試験本番だという気持ちで、自分にプレッシャーをかけながら頑張るしかないと思います。

飯田:
ありがとうございます。本日は、就活だけでなく、社会人としてどうしていくべきか参考になるお話も伺えて、大変勉強になりました。

川元:
こちらこそありがとうございました。色々お伝えしましたが、人生は長いですから、一旗揚げてやるぞ、という想いとともに、健康にも気を付けながらぜひ頑張ってください。

SHARE

おすすめ記事

pickup
  • コミュニケーション力を活かすなら、建設業界という選択肢もある。