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指示待ち人間に無くて、主体的人間に有るもの

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指示待ち人間に無くて、主体的人間に有るもの

同志社大学4年生

佐藤 亮

河村産業株式会社

近藤 利文

interview

学生と経営者がお互いに意見交換をしながら、相互理解を深めるHRsessionの対談コンテンツ。

今回は、河村産業株式会社の取締役社長 近藤 利文様に、お話を伺いました。

同志社大学4年生
佐藤 亮

同志社大学商学部。2023年4月より株式会社クイックで就業予定。就活では人材業界を中心に活動。大学3年生の際にもこのインターンシップに参加していた。趣味は筋トレ。最近はマリーゴールドの弾き語りに苦戦中。

河村産業株式会社
近藤 利文

早稲田大学大学院理工学研究科機械工学科を卒業後、東京芝浦電気(現(株)東芝)に入社し、三重工場配属。製造技術、生産管理に従事し、本社に転勤。本社では、生産企画、関係会社管理、事業部企画を経て、分社会社東芝産業機器製造(株)(後に販売会社と統合して東芝産業機器システム(株)に)に異動、経営戦略を担当。定年退職後、現在の河村産業に入社。取締役社長としてものづくりの改善・改革などを行い6年が経過。

目次

 

人生の転機

佐藤
近藤様の就職活動からお聞きしたいです。ファーストキャリアに大手製造メーカーを選ばれたのはどういった理由からでしたか。


近藤
大学での機械工学の学びを活かせると思ったことと実家から通えるからという理由です。当時は今の学生のようにこれがしたいとか社会の役に立ちたいとかを深くは考えていませんでした。


佐藤
入社後どのような業務を経験されましたか。


近藤
最初は工場で産業用インバータの製造技術を担当しました。その後、生産管理全般をやるようになりました。その後本社に異動となり、生産企画や関係会社管理、分社化や合弁会社設立などの仕事をしました。その後分社化した関係会社に出向して経営企画、経営戦略などの業務に就きました。製造技術から管理業務に移った時、本社に行った時が転機だったと思います。


佐藤
どのような転機だったのでしょうか。


近藤
当たり前ですが工場にいると工場の人しか関わらないわけです。本社には様々な人がいますし、いくつかの工場を管理する生産企画を任されたので、様々な工場の従業員と知り合えました。また他の工場がどのように経営されているのかも知ることが出来ました。


佐藤
人脈も広がったし、他の工場と比較し、それを他の工場に還元することも出来たわけですね。


近藤
そうです。企業で働いていると技術一筋で頑張る人もいるよね。それは一つの道なので良いと思います。でも、違う経験が技術に活きるという面もあると思います。だからこそ私は様々な経験から学ぶことを大切にしていました。


苦しい時に支えられたもの

佐藤
様々な業務を経験したからこそ苦しいこともあったかと思うのですがいかがでしょうか。


近藤
生産管理全般をしていた際、合弁を組むフランスの電機会社の製造委託と、関東の工場から機種移管を同時にしなければならなくなった時は苦しかったですね。生産高が一気に2倍になり、人は足りないし、部品を置いておく場所も無く、やりくりに苦労しました。帰りは深夜12時を超え、翌日は5時半起きで精神的にも肉体的にも限界に来ていました。

 

佐藤
ただ言われた仕事をやっていたのであれば、このようなしんどい経験をすれば辞めてしまうと思います。仕事に対する原動力は何だったのでしょうか。


近藤
辞めようという発想は一度も無かったね。原動力は目の前の仕事をなんとかしなければという想いと、仲間がいたからです。当時課長だったのですが一緒に苦労している仲間がいれば大概のことは乗り越えられるのだなとその時思いました。


佐藤
しんどい中でも仲間と仕事の目的や意味を共有し、協力できたことが大きかったわけですね。


近藤
はい。自分たちの仕事や事業を何とかしたいという気持ちや競合に勝ちたいという気持ちは共通して持っていました。


佐藤
私は組織内で目的を共有することが大切ではないかと思っていて、今までの部活動などの経験上、しんどい時でも皆が同じ目的を持っていれば目の前のことのモチベーションは高くなると感じています。逆に一人だけ大きな目標や目的を持っていても組織として動くことは難しくなると思っています。


仕事をすることは悪いことではない

 近藤
そうだね。今の時代は自分のスキルを磨きたいと思っている方が多いでしょ。自分のキャリアには関係ないからやりたくないという方はいるよね。でも当時はキャリアを磨くというよりかは、その事業を何とかしようと思っていました。今では通用しない考え方かもしれません。


佐藤
目の前の業務がその企業の商品やサービスの価値になっていると理解することはいつの時代においても大切ではないかと思います。ですが今は自分のスキルだけに目を向けがちになっているのではと思ったのですが。


近藤
そうだね。そういった欧米風の考えが日本に浸透してきていると感じますね。


佐藤
当時は与えられた仕事をやることが当たり前だった時代からキャリアを重視する時代に変わってきているということですね。この変化を近藤様はどう捉えていますか。


近藤
もう昔には戻れないよね。労働時間の問題もあるし、絶対に企業側から強制は出来ないですから。ですがあまり働くことが悪いと言いすぎない方が良いと私は思っています。一生懸命働いている人に管理的な立場で働くなというのは少し違うと思います。


 佐藤
仕事をしたい人が出来なくなっているという側面はあるかもしれませんね。目的があって働く分には、働くことは悪くないと思っていらっしゃるわけですね。


近藤
そういうことです。


情報は平等に持つ

佐藤
役職が上がっていき、部下の方も増えたと思います。部下の方の中でモチベーションの差はあったかと思いますが、どのようにマネジメントされていましたか。


近藤
できるだけ企業や部門の経営状況などを伝えるようにしていました。役職は関係なく情報や立場は同等にしてお互いに対等に議論するということが大事だと思っています。もちろん経験や知見は違いますが、意見は言えますから。ですが最後は上司が決める。決めたらその方向に進んで貰うということですね。


佐藤
なるほど。


近藤
情報を与えることでいろいろ考えてもらえるし責任感も生まれます。情報もないのに部下のモチベーションが低いというのは上司のおごりだと思います。


佐藤
私も本当にその通りだと思っていて、情報が少なく何のためにしているのか分からない仕事を指示されたらモチベーションは低くなると思います。仕事の全体像がある程度分かり、この仕事をなぜするのかを議論し、目的がしっかりと分かればモチベーションが高まるのではないのでしょうか。


近藤
私もそう思います。ですが、それでもモチベーションが高い人と高くない人いますよね。この違いがなぜ出るかはなかなか難しいと思います。それが仕事ができる、出来ないにも繋がるとは思います。


モチベーションはライフステージによって変わる

佐藤
私なりにモチベーションの高い人、低い人の違いを考えてみたのですが、自分の属する企業や仕事が世の中に提供している価値に強く共感できるかがその差に繋がると思ったのですが、いかがでしょうか。


近藤
まあなかなか難しいんだけど、働くことや企業に何を求めているか、どういう価値を見出せるかってことになると思います。でも生活していくためにお金を稼ぐことも根底にはあるよね。


佐藤
もちろんあります。


近藤
家庭を大事にして残業はせず、早く帰って家庭を大事にする。そういう方はそれでいいと思います。佐藤さんが言うように、自分のつくっている商品が社会に与える価値のためだけに頑張っている人は少ないと思います。 


佐藤
確かに、それだけのためにで働いている方はいないかもしれません。


近藤
それよりは義務感だとか、家族や生活のために稼がなきゃいけないなどが9割5分くらいあって、一部自分の仕事の価値などがあると思います。役職が上の人や、経験を積み上げれば、だんだんと提供価値も考えるようになると思います。


佐藤
人生のライフステージによって仕事のモチベーションは変わるわけですね。 


活躍する人に共通している想い

佐藤
仕事のモチベーションを上げるためには主体性が大切だと思います。主体的に仕事ができる人とできない人の違いは何でしょうか。


近藤
それは難しいんですよ。でもひとつ言える大切なことは自分で考えることですね。人の指示だけで動く人はこれからの企業にはいらないんですよ。今後はロボットやAIに置き換わっていくわけだから。


佐藤
そうですよね。


近藤
なにか課題があれば、それに対し自分で考えて、仲間と協力して解決のために行動する。そのためにはまずは自分で考えることが大切です。ですがそれを見分けるのはとても難しいんですよ。例えば会議でよく発言する人は自分で考えている人が一般的には多いです。


佐藤
確かに、考えていなければ発言できませんよね。


近藤
でも逆に考えていても言葉数が少ない方もいますし、口数が多くても考えていない人もいます。だから見分けるのは難しいです。ただ、実績を見ればその人が自分で考えているのかはある程度わかりますね。結果論ですが。


佐藤
共通している想いというのは企業や仕事を良くしたいという気持ちでしょうか。


近藤
そうですね。それがないと積極的に考えないんですよ。企業でも立ち位置によって違うと思いますが、私は経営者なので企業を良くしたいという気持ちは大きいですね。工場長であれば工場を、部長であれば部署を良くしたいという気持ちですね。そういった想いが強い方が活躍するし結果を残していると思います。


企業を良くしたいと思う源泉

佐藤
近藤様の河村産業を良くしたいという想いはとても強いように感じますが、どのように生まれたのでしょうか。


近藤
従業員を守りたいという想いですね。弊社は250人の従業員がいて、その家族を含めると1000人くらいになるわけです。なのでこの企業をなんとしてでも守りたい、それは絶対に譲れないですね。


佐藤
自分のためではなく、従業員の方々のためにという想いから来ているわけですね。


近藤
はい。例えば、工場長には工場を何がなんでも護れと言っています。確かに経営の関係で閉鎖することはありますが、それに対し「しょうがない」と軽く考えて欲しくない。上層部と議論してでも工場を守るくらいの強い想いを持っていて欲しいです。自分が担当しているものは自分が一番知っていると思えるほど真剣に取り組む、その強い想いが大切だと思います。 


佐藤
新人の頃は自分のために働くことから始まりますが、役職が上がっていくことで部下のために働くようになり、だんだんと責任も大きくなる。その責任を応えようとする気持ちが仕事に対する想いの強さに繋がっていくのかなとお話を聞いていて思ったのですが。


近藤
それはあるし、そうならなきゃいけないですね。 


なぜ本を読むことが重要なのか

佐藤
先ほど自分で考えることが重要だとおっしゃっていましたが、自分で考えるようになるためには本を読むことも一つとよく言われるのですが、具体的に本から何を学べば良いのでしょうか。


近藤
私は社会人生活の中で成長するために必要な3つの要素があると思うので、それを学ぶことですかね。1つ目が経験を積むこと。これは実際に自分で考えながら仕事をして経験を積むことです。2つ目が本を読むことです。本を読むことで他者の経験から学ぶことができます。3つ目は人から話を聞くことです。


佐藤
人から話を聞くことは本を読むことと似ていますよね。


近藤
そうなんですが、違いはペースですね。本は自分のペースで読めます。じっくり読んだり、飛ばして読んでもいい。人から聞くことは相手のペースに合わせないといけませんが、質問ができるメリットがあります。以上の3つから学びを得ることで社会人として成長できると思います。


佐藤
経験から学ぶことが成長の鍵になるわけですね。


近藤
はい。ですが、若いうちは人の話を聞く範囲は限られます。役職が上がれば様々な方のお話を聞けます。一方で本は誰でも読めるメリットがありますね。なので本を読むことは他者の経験から学ぶという目的で読むのが良いと思います。 


創業者は「強い」

佐藤
御社の強みである技術も、自分で考えることからきているように感じます。技術を生んでいるのは従業員の方々だと思います。素晴らしい技術は自分で考え工夫した結果生まれるものではないかと思うのですが、近藤様が思う御社の強みは何でしょうか。


近藤
その通りだと思いますが、私はこの企業に来てまだ6年です。この強みは創業者が中心に築いてくれた力です。もうお亡くなりになりましたが、創業者はやはり強いとつくづく思いますね。ですが、創業者はいつまでも生ることは出来ませんので。


佐藤
何が強かったのでしょうか。


近藤
企業に対する想いの強さだね。これは絶対勝てないですね。何としてでも企業を発展させようという想いはやはり強かったですね。その創業者がつくり上げた技術力やそれに基づいた品質が今も強みになっていますね。


佐藤
やはり仕事に対する想いの強さが重要なのですね。


近藤
はい。製品を作るうえで、やはり大手企業とは違う生き方をしなければなりません。大手企業や中東南アジアには価格では勝てません。だからこそ技術力が大切なんです。


技術を教えることで得られるもの

佐藤
技術力はやはり人から生まれますよね。


近藤
そうです。人が持っているものは大きいです。ですが技術力は3つあると思っています。
1つ目は人。2つ目は設備ですね。古い設備だと頑張っても技術力で勝てません。3つ目はドキュメントです。技術を伝える力ですね。技術を可視化し、他の人も習得できれば企業全体の技術力は向上するわけです。


佐藤
高度な技術になればなるほど価値がありますが、習得は難しくなりますよね。


近藤
はい。でも技術者は意外と技術を教えたがりません。皆さん忙しい中ドキュメントを書くので、書く暇がないのも現状ですね。あと、技術を自分だけのものにしようとする方もいらっしゃいますね。その気持ちも確かに分かりますが、誰かに教えることでもう一歩ステップアップ出来るチャンスがあると思います。


佐藤
私も教えない方が得じゃないかと思ってしまいました。なぜステップアップできるのでしょうか。


近藤
教えることで取って代わられる可能性はありますが、自分の仕事を他者に任せられるので自分が上のポジションにいくチャンスが生まれるということです。


佐藤
なるほど。しっかりとその説明をすることも大切かもしれませんね。


近藤
そうですね。弊社でも取り組んでいます。


仕事の目的は何でもいい

佐藤
では最後に主体的に動ける方の違いについて結論づけたいと思います。違いの一つは自分で考えられるかどうかで、そのためには企業や仕事を良くしたいという想いが重要である。その思いは様々な理由から生まれますが、源泉の一つは主語が自分の為から他者のためになり、他者の人数が多くなるほど想いも強くなると考えました。


近藤
そうですね。


佐藤
そして、やはり自分の仕事が社会に提供している価値に少しでも共感することは大切なのかなと思いました。


近藤
うん、それも大事ですよね。でも自分で考えるのは自分のためでもいいんです。スキルを磨きたいとか。その企業や仕事を良くしようと考えることが何よりも重要だと思います。


佐藤
なるほど、目的はなんでもいいけれど、目の前の仕事に対して向上心をもって取り組めることが活躍する人に共通していることなわけですね。


近藤
うん、そうだね。


佐藤
私も今後仕事が社会に与える価値が大切だという気持ちが薄れていくかもしれませんが、企業や仕事を良くしたいという気持ちは忘れずに、仕事に全力で取り組み成長しようと思います。ありがとうございました。


近藤
頑張ってください。ありがとうございました。


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