東京女子大学4年生
木俣 莉子
キチナングループ 吉南株式会社
井本 健
学生と経営者がお互いに意見交換しながら、相互理解を深めるHR sessionの対談コンテンツ。
今回は、キチナングループ吉南株式会社の代表取締役社長 井本 健様に、お話を伺いました。
東京女子大学現代教養学部。2022年4月より株式会社クイックで就業予定。就活ではベンチャー企業を中心に幅広く活動。大学でも他大学の広告研究会に入ったり、タイで開墾を手伝ったりと幅広く活動していた。趣味は美味しいものを食べること。最近は美味しいお茶集めとボルダリングにもはまりかけている。
2005年日本大学入学後大学1年生からITベンチャー企業でインターン生として事業運営を経験。■新卒では東京で営業会社に入社。1年目で優秀社員賞、3年目に課長に昇進。■25歳で吉南運輸に入社後、赤字部門の黒字化達成。27歳で物流ITベンチャーを起業し独立。■その後吉南へ「IT活用ではたらく人が輝ける物流業界」を目指して再入社し、2020年5月に33歳でキチナングループの代表就任、グループ10社、売上120億の会社を経営。
目次
会社発展のきっかけとなったのは、
他社が二の足を踏む“粉体”運搬。
木俣:
早速ですが、御社の設立から今までのざっくりとした変遷をお伺いできますか?
井本:
私たちキチナングループは、吉南運輸という会社がもともとの母体となっています。
私の祖父がトラックドライバーを個人事業主として始めて、今年でちょうど創業60年という感じですね。
もともとは運送会社でした、化学メーカーのお客様から「工場の中の諸作業も手伝ってくれないか」という
要望があったことをきっかけに、現在は運送だけではなく様々な事業展開をしています。
木俣:
お客様のご要望をきっかけに、事業形態が変わっていったんですね。
井本:
そうですね。私たちの会社がある山口県の宇部市は、もともと炭鉱の町、化学の町として有名だった関係で、昔から運送会社はいっぱいあったんですよ。
当時、私たちのような新しい運送会社は当然いきなりそんなところに入れないわけですよね。
木俣:
そういった状況だと新規参入のハードルはかなり高そうですが、会社発展のきっかけはどのようなところにあったのでしょうか。
井本:
“粉体”と呼ばれる、製品に使用される原料を作っている会社さんもあるんですが、粉って舞うし、
トラックが汚れるので嫌がられるんですよね。
そういった理由から同業他社が断っていたところを、うちの祖父が積極的に引き受けさせていただいたのがきっかけで、化学工業製品の受注が増えていき、業績も伸びていきました。
木俣:
他社がやりたがらないところを引き受けたことが、会社発展の鍵となったんですね。
道路に対しても感謝を忘れない。
理念に掲げる「報恩感謝」の精神とは。
木俣:
「どんなことにもまずは挑戦してみる」精神は世代を超えて井本様まで受け継がれているように感じますが、経営理念にある「報恩感謝」も大事にされている考えでしょうか。
井本:
そうですね、報恩感謝というのは受けた恩にちゃんと感謝して自分自身も恩に気づいて報いよう、
貢献しようという意味で、私たちが大切にしている言葉です。
木俣:
とても素敵な言葉ですね!業務の中でどのように意識されていますか。
井本:
物流って非常に公共性の高い商売だと思っていまして、例えば、自分たちのお金で作ったわけではない道路で商売させていただいてるんですよね。公共物を使わせてもらっているので、当たり前ではありますが道路を傷つけない、ポイ捨てをしないことは徹底します。
地域の皆さんに対してもこれだけ大きなトラックを日々運行させて頂いていることを感謝していますし、
そういったことを当たり前だと思わずにきちんと感謝していき、お客様、地域に貢献していこうという
「報恩感謝」の精神が経営理念の中でも根幹になってきています。
社員全体で考える、“キチナングループ”らしさ。
木俣:
そういった気持ち・価値観を社員様全体と共有するために具体的にどのようなことをやってこられましたか。
井本:
例えば去年の夏にグループ各9社の役員の方に来てもらって、役員の理念合宿を実施しましたね。
それぞれの会社で今まで大事にしてきたことや、“キチナングループらしさ”とは何かというのをみんなで
共有し考えました。
木俣:
合宿はすごいですね!
井本:
その後、当然役員だけでは納得感というのが高まらないですし、社員一人一人の価値観の共有が大事だと
考えまして、社内で新しい価値観を共有するためのプロジェクトを立ち上げメンバーを募り
「OneKICHINANプロジェクト」を発足してもらいました。そのメンバーが小規模の社内ワークショップを
複数回運営して、キチナンが大事にしてる価値観ってなんだろうねとか、キチナンがお客様に提供している
価値とは何だろうねということを話し合い、社内全体で新たなMVVを構築しています。
木俣:
社員の皆様の考えもとことん反映させてMVVを構築しているんですね。
ちなみに、新プロジェクトの発足メンバーとして集まったのはどのような年次の方だったんですか。
井本:
新卒1年目から5年目まで、あと中途社員も含めた、若手中堅ベテランが混ざったメンバーですね。
木俣:
新卒1年目から、早速手を挙げて活躍されている社員さんがいらっしゃるんですね。
一緒に働きたいのは、同じ想いを持った人。
木俣:
関連して、SNSにて「社長の右腕を募集します!」というイベントを新卒向けに企画されていたのを拝見しました。右腕のポジションは既に埋まってしまいましたか。
井本:
当然 、父親の代からお世話になっている方も含め、右腕となってキチナングループを支えてくださっている方は多いですが、自分が採用して自分が育てて、っていう方はほんとにこれからどういう方が出てくるかってところなんですよ(笑)
木俣:
新卒の席はまだ空いているんですね(笑)
そういった方に、ご自身と共通して持っていてほしい性質はありますか。
井本:
僕は本当に「お客さまのために」「いい会社にしたい」という想いは誰にも負けないと思っているので、
ロジカルに最短で行くのか、人に寄り添って進めていくかといった手段が異なっていたとしても、
根っこにある想いの部分が同じであるといいなと思います。
木俣:
ありがとうございます。価値観の共有に力を入れられているのも、全体で同じ想いを持って働くことを
重視されているからなんですね。
“お客さまのために”の追求で、
たどりついた事業展開。
木俣:
御社ではお客様へトータルでサポートする提案ができるよう、様々な事業を展開していると思います。
やはりお客様の利便性を考えての事業展開でしょうか。
井本:
そうですね。
大手の物流会社さんだと、電気工事や倉庫の管理を下請けの会社に任せるケースが多いんですよね。
そうするとどうしても品質が安定しにくいんですよ。
だからこそ地域に密着して、実際のオペレーションも含め、トータルサポートの提案は私たちにしかできないことで、ときには大手さんと協業しながらそういったものもやっていくっていうのは大事かなと思っています。
木俣:
そうですね。自社で完結できると、サービス提供のスピードも早くなりますね。
井本:
下請けさんに見積をお願いして、更に下請けさんにお願いして…っていうのより、一緒に行っちゃった方が楽ですからね。電気工事の人、溶接する人…そういう人たちが一気に行けちゃうので、迅速さ、キチナンさんに頼めばすべてひっくるめて解決してもらえるなっていう安心感が今の私たちを選んで頂けている一番の理由かなと思っていますね。
3代受け継ぐ、変わっていく力。
木俣:
ちなみに以前からお客様へのトータル提案を見据えた事業展開をなさっていたんですか。
井本:
実は運送や物流まわりに特化せず、幅広く荷物を作っていた時期もありましたね。
木俣:
荷物を作るとは…
井本:
取引先となる会社を運営するということですね。例えば土木の会社をやると、受注した際にトラックが動くじゃないですか。ガラス瓶の再生工場をやると、回収・再生・販売でトラックが動くじゃないですか。
そういう時期も実は以前はあったんですよね。
木俣:
なるほど、そうだったんですね。
井本:
そんな中、リーマンショックで世の中全体の業績が厳しくなってきたところで、このままじゃ厳しい、
何に特化していくべきかってところで、もう一度お客様は何を求めているのかっていう原点に立ち返り、
トータル提案できる会社を目指していったんですね。
木俣:
なぜ御社にはそういった変わっていく力があるんでしょうか。
井本:
経営計画書 の中に祖父が作った「無から有を生め」という言葉があるんです。
私も祖父も地主などではなく、祖父自身が中卒で自衛隊に入って、運転免許 を取って、さあ地元で何をしよう、というところからスタートしています。
その後、運送だけではなく、山口県で最大規模のYICグループという専門学校の立ち上げも先々代、先代が築き上げてきました。
世の中に無いものだったり、必要とされるものに対する執着心というか、ニーズを満たしたいという思いと行動力といったものもマインドとしてあるんでしょうし、父である会長も私もそういった気持ちは強く受け継いでいて、それが社風になっていっているんだろうと思います。
コロナ禍に起きた、思いがけない変化。
木俣:
時代の変化に対する対応力、スピード感が御社の魅力ということでしたが、コロナ禍においてどのような変化が起こりましたか?
井本:
そうですね、実は私にとっては代替わりのタイミングでもあったんですが
zoom等のITツールの導入も済んでいたので、事業自体はまったく止まることなく成長できたかとは
思っています。
社員みんなの一体感、というのもコロナ禍を機に生まれたなと感じていますね。
木俣:
人と人の距離が離れてしまいがちなコロナ禍において、逆に一体感が生まれたのはなぜでしょうか。
井本:
そうですね、物流というのは悪く言うと3Kのイメージがあって、現場仕事で大変だっていうのが学生の
皆さんからもあるかもしれないし、少なからず私や現場の方からしてもそういうイメージがあったかも
しれないんですよね。
木俣:
そうだったんですね。
井本:
ただこのコロナをきっかけに、やっぱり物流がないと生活が止まっちゃうよね、といった物流の大切さであったり、自分たちがそれを担っているという責任感を感じる機会が多くなったんです。
それこそが私たちが自然と一体となれた一つの大きな要因だったと思うし、業績の着実な伸びに影響していったっていうのはあるんじゃないかと思います。
木俣:
確かにステイホームを意識するようになってから、私たちの快適な暮らしには物流業が密接に関わっていると実感するようになりました。
“成し遂げたいこと”は、いきなり降ってこない。
就活生に伝えたい、目標を見つけるための秘訣。
木俣:
もう一点、井本様ご自身は「物流をもっと進化させていきたい」という一貫した想いをもとに行動されてきたと思うのですが、そういった“人生をかけて成し遂げていきたい目標”が見つからず、悩んでいる就活生も多く見受けられます。そのような方に向けてアドバイスをいただけますか。
井本:いやあ難しい質問、深い質問ですねえ(笑)
一度どっぷり何かの世界に浸かると、もっとこうしたい、ああしたいという欲が出てくるんじゃないかなと思うんです。それが業界を変えたいとか、そんな大きな話じゃなくてもいいんですけど、自分のやりたいことに対して素直になることが大事なんじゃないかと思いますね。
木俣:
なるほど。
井本:
飛び込んでみるということも、成長したい人には大事だと思います。それに加えてやり切るってとこですね。
いろんなことをやりたくなる人の気持ち、すごくわかります。でも、やり切った先に初めて見えるものってあるので、自分でどこまでやるか決めるのも大事だと思うんですが、一つひとつやり切るということを意識してほしいですね。
木俣:
何かしらの物事に対して主体的な関わり方をして、やり切るところまでいくと自ずと見えてくるものがあるのかもしれないですね。
井本:
はい。最初からやりたいことが決まっている人の方が少数派だと思います。変わらないもの、例えばビジョン、ミッションとか、中小企業だと社長も変わりにくいので、そういった変わりにくいものに注目して会社を選ぶのも大事なんじゃないかと思います。
木俣:
じゃあ就活の際に無理にやりたいことを見つけようとしなくてもいいんですね。
変わらないもので選んで、仕事を主体的に頑張る中で見つけていくっていうのでもいいんですね。
井本:
そうですね、僕はそう思います。就活の面接の際にも嘘言ったらばれますから(笑)
もちろんこういう方向ですっていうのはあっていいと思いますし、発言してみることは大事だと思います。そういった夢を馬鹿にする人も中にはいるんですけど、僕は大事にしてほしいと思っています。
木俣:
夢を言葉にすることは大事ですよね。
井本:
そう思います。
新卒1年目、伸びるのは「可愛がられ力」を
持っている人。
木俣:
最後に個人的な質問で恐縮ですが、もうじき入社するので
新卒1年目の人に対しても何かアドバイスをいただけないでしょうか。
井本:
そうですね、本当に教えていただくことがたくさんあると思うんですよ、先輩に。
どこの会社でも言われるとは思うんですけど、とにかく素直にやってみるっていうのが大事だと思いますし、なんかこう「可愛がられる力」って大事だと思うんですね、最近。
木俣:
可愛がられる力ですか(笑)
井本:
例えば、自分が暇だったら「ちょっと手伝えることないですか」とか、昼ご飯に連れていってもらったら「ありがとうございました!!!!」とか(笑)
そういう”可愛がられ力”っていうのを1年目から持ってる人は伸びるなと、新卒を見てても思うんですよね。
そういう人って先輩に可愛がられるから仕事が楽しくなってくるんですよ。
1年目にどれだけ仕事が楽しいと思えるサイクルが作れるかっていうのは、ほんとに大事になってくると
思います。
木俣:
媚びを売るのとはまたちょっと違うんですよね。
井本:
違います違います、全然違いますね(笑)
特定の自分の見返りだけを求めるのだと、媚びを売っているように見えてしまいますが、一生懸命さとか、何か役に立ちたいなという気持ちとか、ありがとうございますと心から言える気持ちとか、ほんとにそう
いう力を身に着けていると可愛がられるし伸びるなと思いますね。
木俣:
貴重なアドバイスをありがとうございます。入社後、たくさん周りの方に助けてもらうと思うので感謝の
思いを忘れずに…あ、まさにこれが「報恩感謝」ですね!
井本:
そうですね、報恩感謝ですねえ(笑)応援しています。頑張ってくださいね!
木俣:
はい、ありがとうございます!
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