早稲田大学4年生
吉川 和希
港製器工業株式会社
岡室 昇志
学生と経営者がお互いに意見交換をしながら、相互理解を深めるHRsessionの対談コンテンツ。
今回は、港製器工業株式会社の代表取締役 岡室 昇志様に、お話を伺いました。
早稲田大学4年生法学部。2023年4月より株式会社クイックで就業予定。就活では人材、金融業界を中心に活動。趣味はサッカー、美味しいものを食べることで、休日はサウナで整う。今年初めて花粉症を発症、持病の鼻炎が悪化して鼻声に。
1986年に同志社大学工学部電気工学科を卒業後、大手家電メーカーである 三洋電機株式会社に入社し、コンピュータのプログラミング及びシステムエンジニアを経験。 1993年に創業社長である父に呼ばれ港製器工業株式会社に入社。生産管理、購買、 品質管理、ISO事務局、営業を経験後、2008年に社長に就任。社長就任直後に リーマンショックが起こり苦難に直面するが、それが経営者としての在り方と、自社の 立ち位置を見つめ直す機会となる。
目次
吉川
本日はよろしくお願いいたします。初めに、岡室社長のご経歴の方をお聞かせください。
岡室
私が高校3年生の頃にパソコンが出始めたんです。それをかなり使い倒して自分でプログラミングにもチャレンジして、大学でも人工知能の研究やプログラミングに相当力を入れてました。
吉川
岡室社長の原点はプログラミングだったんですね。
岡室
そこから就職した企業でソフトウェアの開発部門に配属されました。そこは自分にとってうってつけの部署で、プログラミングからシステムエンジニアまでやりましたね。本当にコンピューターの気持ちがわかるみたいな。そんな状態までやり込んでました。
吉川
そこから港製器工業様に実際にご入社された経緯についてお教えください。
岡室
前職に飽きてきたんです。プログラミング言語がどんどん変わったり。そのたびに覚え直す必要があるし、その人が作ったルールに則って使い方を考えるということに抵抗が出てきたりとかしてたタイミングでちょうど父親から声がかかって転職を決意しました。
吉川
そうだったんですね。プログラミングのご経験が、今の社長としてのお立場で活かされることって何かありますでしょうか。
岡室
沢山ありますが、一番は思考形態です。プログラミングってあいまいなことが許されないので、ロジカルシンキングを学ぶことができました。そのおかげで仕組みを標準化して次の人に教えていくことにとても役立ちました。
吉川
なるほど。私はエンジニアに関する知識がないので勉強になります。
続きまして、御社を設立された背景を聞かせていただけますでしょうか?
ラッシング事業の興り
岡室
弊社は祖父が設立した会社から、父親が製造部門として独立してスタートしました。当初は滑車やシャックルを製造していましたが、業界全体が不況に陥ることもあり、その対応として多角化を推進する中でコンテナラッシングに出会いました。
吉川
そこがラッシング事業の始まりだったんですね。御社は現在ラッシング事業の中で日本唯一の企業であるというところがすごく魅力的な部分かと思いますが、なんで競合がいないんですか?
岡室
もともと日本には7、8社ぐらい競合メーカーがあったのですが、コンテナラッシング業界は進化し続けてきた歴史があるんですよ。その進化に対応して商品開発するところについていけなかった企業が淘汰された結果、唯一日本で弊社だけが残ったと。
吉川
御社はどのように変化への対応をなさったのでしょうか?
不確実なものへの耐性
岡室
どの業界も各企業が切磋琢磨して進化していきますが、コンテナラッシング業界も大きく進化してきました。効率よく、軽量化し、安く、安全性が高く、より多くコンテナを積載できるようにと変化していく中で、金具自体の開発やコストダウンが必要でした。当社は日本で唯一、世界の変革の波に乗ることができました。
吉川
そうだったんですね。日本唯一の企業であるからこそ大変な部分だったりご苦労された経験っていうのもございますか?
岡室
日本唯一ではありますが、ラッシング業界もグローバル化をしていまして、世界でみると3社競合がおります。他社との違いは、技術力です。コンテナラッシング自体はハードウェアになりますが、さらに大事なのがソフトウェアです。どのように大量のコンテナを船に積み付けるか、という積み付け設計というものがあり、経験や知識が必要になります。
吉川
ありがとうございます。ものづくりなのでハードウェアに目がいきがちですが、ソフトウェアにおける技術力も大切になってくるのですね。
岡室
おっしゃる通りです。コンテナラッシングにおいては、そういった技術力がすごく重要なんですよね。いろんなことを考慮しながら何百というラッシングパターンの設計は簡単ではありません。ノウハウのない新規メーカーが参入することが難しいという世界です。
お客様のニーズを追求し、それに答える
吉川
ありがとうございます。お客様のイメージをそのまま形にできるということが
御社の強みの一つと私は思っているのですが、具体的にどういったことなのでしょうか?
岡室
お客さんがどのようなものを作りたいかっていうニーズをしっかりと聞き取って、それを開発設計し、それを実際に製造して製品化できるということです。そこには今まで積み上げてきた設計と製造ノウハウを活かしています。
吉川
なるほど。ヒアリングを大事にされているんですね。
岡室
はい。ヒアリングしたイメージを具体的なカタチに仕上げる、図面化だけでなく製品化するということになります。
吉川
御社の中で全て完結することができるということですか?
岡室
そのとおりです。お客様のニーズにあったものを試作や検証を繰り返して製品化していくといった段階になっております。
多角化していく事業展開
吉川
御社はラッシングが主軸かと思うのですが、その他の多角的展開が可能であるっていう理由はなんでしょうか?
岡室
当社はこれといった特定のものを扱うということは少ないんですよね。いわゆる何でも屋であって、受け皿が広いんですよ。
吉川
様々なニーズに対応できるわけですね。実際に多角化するにあたってどのようなことが重要になってくるのでしょうか?
岡室
まず、その時々にこういうものが今後必要なんじゃないかっていう情報がどっかから出てくるんですよね。
それを、市場で受けられるという状態まで確信を持ってやり続けるってことですね。
弱いリーダーシップ
吉川
続いて岡室社長のお考えなどをうかがえたらと思います。ホームページを拝見した際にこれからの時代は弱いリーダーシップの時代が到来するということをおっしゃっていたと思うんですけれども、なぜその弱いリーダーシップの時代が到来するってお考えなんでしょうか?
岡室
まず弱いリーダーシップの逆は、強いリーダーシップなんですけれども企業とかですごく人を引っ張っていって、俺についてこい、みたいな感じでやる社長とかいるじゃないですか?
吉川
はい、カリスマ社長ですね。
岡室
その人の考えていることが当たっている時はいいんですよ。しかし、やっぱり時代の変化があったりとかするんで、本当に時代に対応できますか?と。
吉川
確かに、企業が大きくなればなるほど、やることが多くなって全部が全部フォローしきれないですよね。
岡室
そうなんですよ。全部の業界に精通しきれないので、全部把握するのは無理なんですよね。あとカリスマ社長が病気で倒れたら、共倒れじゃないですか。
吉川
なるほど、その通りですね。
岡室
今、変化の激しい時代の中で、強いリーダーシップでは良い時はいいけども非常に脆いということですね。
吉川
なので、社長に全てのしかかる強いリーダーシップは時代に適応できなくなってくるんですね。
自己実現の場、企業
岡室
はい、そして私は企業は社員にとって自己実現の場と思っているんですよ。
吉川
自己実現ですか。
岡室
企業という器を使って、自分を成長させ、自分のスキルをどんどん高めていく。
そして達成感を味わって、人生を豊かにしてほしいと思っています。
吉川
その自己実現の場を提供するためにも、弱いリーダーが必要ということにつながってくるのでしょうか?
岡室
その通りです。社員みんなが自ら考え自ら動くっていう主体性を尊重するために、最低限のリーダーシップというものを心掛けています。
一人一人を大切にし、一人一人も役割を演じ切る
吉川
岡室社長は弱いリーダーシップ到来の時代において社員の皆様にどういったことを求められたり、どういった教育をされてらっしゃいますか?
岡室
まず、場を提供するということですね。社員それぞれに役割がありますので、自分の今やるべき役割は何かを理解し、それをしっかり演じ切るということを意識させています。
吉川
現場で実際に自分たちが経験したことを学びにするように教育していくというお考えなんでしょうか?
岡室
そうですね、実際に経験することが重要だと感じます。
吉川
またホームページを拝見いたしましたところ、お取引先のお客様に対してすごく大切にされて、お客さんに寄り添ったご支援されてるっていう部分で、すごく人を大切にされてるなと思い、大変魅力的に感じたんですけれども...。
岡室
はい。
吉川
人を大切にされるっていう観点で大切にされていることを伺えますでしょうか?
岡室
そうですね、自分自身がそうだったように自分のやりたいことをできて、それで成長につながる場を、社員にも提供したいと思っているんですよ。
吉川
なるほど。
岡室
なので社員からこういうことやりたいっていう提案があった場合にはだいたいは承認してますね。
失敗を恐れず、チャレンジする
吉川
社員の方がやりたいって言ったことが、失敗するリスクが大きかったとしても、社長がその背中を押すって形ですか?
岡室
実際、若手社員が失敗するっていうレベルは結構大したことないんですね。なので、スキルを磨いていくといった感じで成長していこうと後押ししています。
吉川
ありがとうございます。経験がないからさせないのではなくて、経験ないからこそ経験を積ませて
成長につなげていこう。というわけですね。そういった考えはすごく素敵だなと思いました。
岡室
ありがとうございます。
吉川
最後に御社を志望される学生だったりとか今就職活動されている学生に対して
メッセージがあればお願いいたします。
岡室
どこの企業でもやる気があって行動力があるという人を求めていると思います。
なんか面白そうだな。とか、この企業なら成長できそうだな。という環境を選んだら
非常に面白いんじゃないかと思います。
その方が自分自身の人生に役立つと思います。
吉川
今回貴重な時間をいただき、大変ありがとうございました。
岡室
こちらこそありがとうございました。
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