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10年連続全国1位 でも、まだゴールじゃない

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10年連続全国1位 でも、まだゴールじゃない

関西大学4年生

竹中 優輝也

奈良スバル自動車株式会社

高木 信一

interview

学生と経営者がお互いに意見交換をしながら、相互理解を深めるHRsessionの対談コンテンツ。

今回は、奈良スバル自動車株式会社代表取締役社長 高木信一様に、お話を伺いました。

関西大学4年生
竹中 優輝也

関西大学商学部。2023年4月より株式会社クイックで就業予定。小学3年生から高校3年生まで10年間サッカーをしており、現在は社会人フットサルチームに所属。趣味はギターで弾き語り。特技は鳥肌を自由自在に出せること。睡眠と運動と犬が大好き。

奈良スバル自動車株式会社
高木 信一

1968年4月生まれ。立命館大学理工学部卒。卒業後他社にエンジニアとして7年間勤務ののち、 祖父創業の奈良スバル自動車株式会社に入社。2019年に代表取締役に就任。 現在はグループ会社であるボルボ・カー奈良及び奈良移動体通信株式会社の代表も務める。 学生時代はESSのドラマ部門に所属し英語劇に参加。今でもミュージカル鑑賞は趣味の一つ。

目次

 

竹中
本日はよろしくお願いいたします。高木社長は3代目の社長でお間違い無いでしょうか。


高木
そうです。祖父から父へ、父から私が継いで現在に至ります。


会社の方向性を可視化する

竹中
経営理念を非常に大切にされていると感じたのですが、それはおじいさまの想いを受け継いでいるのでしょうか。


高木
元々、社是はありました。社是も含め、これまで当社が大切にしてきたことを改めて文字にして、「経営理念」として整理したのは最近のことです。2000年くらいにこの会社に戻ってきたとき、経営方針を明確にすることの大切さを教わりました。そこから徐々に固めていったというわけです。


竹中
ビジョンが「当社で働く仲間全員が、活き活きと働き、人間的に成長できる会社」で、10年前に「活き活きと」という言葉を付け加えたとHPで拝見しましたが、これは高木社長が付け加えたのでしょうか。


高木
そうです。約10年前に付け加えた言葉です。


竹中
その言葉を付け加えた背景を教えて頂きたいです。


高木
私が勝手に感じていたことかもしれませんが、当時は当社の雰囲気が、少し先の或いは将来の「楽しみ」や「喜び」の為なら、「今」を犠牲にしても良い、に近い感じだったのです。
会社のために身を削って働くということが良しとされていた時代でもありましたしね。
しかし、それではダメだ、「今」も、「今こそ」が大切なのだと感じていたのです。


竹中
そうだったんですね。


高木
でも、それは時代とともに変わってきました。1人1人の人生を考えたとき、時代の流れに沿って我々も変わっていかないといけないと思ったんです。なので、「活き活きと」という言葉を付け加えたのは、特別私1人の発想ではありません。


全ての業務は幸福の実現のためにある

竹中
ミッションが「企業活動を通じての幸福の実現」ですが、その為に、取り組んでいることはありますか。


高木
企業活動の全てが幸福の実現に繋がっているという考え方なんです。幸福の実現のためになにか特別なことを行っているわけではなく、この対談の時間、いつもの朝礼、業務中のふとした出来事全てが幸福の実現に結びつくものであるはずです。その為に個人もそうですが、会社として目的を見失わないことが重要だと思っています。

 

竹中
HPで、ミッションが一番上でビジョンがその下という風なピラミッド型に書かれているのはそういう理由があるからなんですね。


高木
そういうことです。


竹中
ビジョンのところには、更に、必要とされ続ける会社という言葉がありましたが、この言葉の想いについて教えていただきたいです。


高木
100年続いた会社が101年目に倒産することがあり得る世の中です。続いていくことは当たり前ではないんですね。また、奈良スバルに関わる人々はお客さまだけではありません。関わる全ての人達に助けられ、必要とされるからこそ成り立っていると感じています。こういった想いから「続ける」という文言にしています。


竹中
ありがとうございます。必要とされ続けるために取り組んでいることはありますか。


高木
これもやはり、必要とされ続ける為に何かをしているわけではなく、全ての業務が最終的なゴールに繋がっているという考え方ですね。


竹中
ゴールを見据えて働くことが大切なのですね。


高木
そのとおりです。


10年連続全国1位の会社

 竹中
ディーラーオブ・ザ・イヤーというのはどういったものなのでしょうか。


高木
我々は㈱SUBARUの販売代理店という形を取っている会社ですが、北海道から沖縄まで全国44社ほどありまして、その中で競争するんです。指標は非常に複雑で、売上や利益、お客様満足など色々あって、それぞれの部門賞もありますが、最終的な総合評価で、我々が10年連続1位を取っています。


竹中
10連覇ですか…。とんでもないことですよね。


高木
とんでもないことですよ(笑)。


竹中
10連覇できる理由はどんなところにあると思ってらっしゃいますか。


高木
理由を答えるとすれば、会社創立以来70年もの長い間、 先輩社員やお客様が支え続けてくれたことの積み重ねによるものだと私は思います。 10連覇を達成した10年間だけ頑張ったというわけではなく、 50年以上お勤めいただいている方から若手の社員まで幅広い年齢の現職の方々、 退職された方々も含めて、今までの頑張りが、思いがけずこの10年間に結実したということですね。


竹中
幸福の実現にというゴールに向かって、これまで行ってきたことが積み重なって、10連覇につながっているということでしょうか。


高木
そうですね。10連覇というのも幸福の実現を達成するための1つの手段なので、10連覇を取ったから万歳ではなくて、最終的なゴールに繋げたいという想いがあります。


竹中
連覇が始まったのも、ビジョンに「活き活きと」という言葉を付け加えたのも同じく10年前ですよね。何か関係はありますか。


高木
あまり意識したことはありませんでしたが、全国1位を目指す中で、従業員が疲弊していては意味がないという想いはありましたね。現場は、数字や指標を追い求めていかないといけないですが、そうなるとどうしてもしんどくなりますからね。とは言いつつ、やはりみんな必死で目標に向かって働いてくれていたと思います。


竹中
1つの目標やゴールに向かってチームで協力して働いていく風土が御社にはあるのですね。


高木
これをやろうと決まったときに、みんなが同じ方向を向いて進んでいく力は非常にあると思いますね。これもまた長い歴史の中で、先輩社員が積み上げてきたことですね。頼もしい限りです。


10連覇しても、なお考え続ける「強み」とは

竹中
奈良スバル様だからこその強みは何でしょうか。


高木
これが難しいんですよね。そういう議題に対して、人の良さとか真面目に努力できる環境があるとか、よくそんな言葉が出ますよね。


竹中
就活中によく聞きますね。


高木
「当社の強みは人の良さと真面目さです!」という回答は少し怪しいと思っているんです。(笑)これはある意味、プロとしての専門性に自信がないからそういうことを言っているのではないかと。もっと芯にある本質的な強みを見出しそしてそれをもっともっと磨いていく必要があるのではないかと考えています。人の良さや環境は本当に他社と比較した中で1番なのか分かりませんしね。だから、この質問への回答は難しいんです。


竹中
10連覇という結果をしっかりと出してから、人の良さや環境面が強みだと言うと説得力が上がりそうですね。


高木
そうですね。ただ、10連覇は手段の1つですし、結果を出していたとしてもそういったことを強みだと言って良いのかなと疑問に思います。一流のホテルには素晴らしいホテルマンがいるし、利他的精神で他人と向き合っているボランティアの方々だって世の中には沢山おられます。「『お客様に親切』や『人柄が良い』が強みです」と自信を持って言えるには、まだまだだと感じますし、もっと違う部分を強みにするべきじゃないかと悩み、考え続けています。


竹中
10連覇をして、更に奈良スバル様だからこその強みは何かと追い求めていく姿勢こそが、御社の強みなのかもしれないですね。


高木
なるほど、ありがとうございます。メモしておきます(笑)。


世界的に有名なレースに整備士を派遣

竹中
HPを拝見して気になったのが、国内外のレースに参加しているということなのですが、詳しく教えていただきたいです。


高木
国外や、国内のレースにも整備士を派遣しています。中でもニュルブルクリンクは世界的に有名なレースで、全国のスバルメカニック(整備士)の中から試験や実技を突破した8名が選ばれ、派遣されるというものですね。


竹中
たくさんの応募者がいますよね。


高木
もちろんです。私も最終選考に行きました。最終選考にはメカニックが28名が参加し、その中から8名に選ばれたときは、一緒に行った社員と共に感涙しました。


竹中
すごいですね。出場を試みる理由はありますか。


高木
あまりこういったことに必要性を感じていなかったんです。お金がかかるし、現場の従業員を派遣するので、現場は1人減って大変です。けれど、「行きたい!」と意思を受け止めてあげることや、選考過程はもちろん、実際にレースの現場を経験すること等、ネガティブ要因を遥かに上回るものがあると考えています。違う見方をするとメカニックという職種の価値も上がりますし、そういうチャンスがあるということを感じてもらいたかったんです。本選考の前に、社内選考もしましたが、会社全体で大いに盛り上がりました。


竹中
会社全体のイベントになるので、モチベーションにも繋がりますね。


高木
その時、選ばれた従業員の背中を見ていた後輩は、いつの日か自分も行きたいと思えるでしょうね。


竹中
次はいつ出場される予定なのでしょうか。


高木
出場するための必要条件があって、それを満たす従業員がいない場合は出場できませんが、レースは1年に1回あるので、大会参加の資格者がいるときは、必ず手をあげようと思っています。


引き出しの多い人間になれ

竹中
入社をしてくる学生や、若者に対して求めていることはありますか。


高木
当社では、誠心力協というあるべき人物像を定めています。協力心・向上心・誠実・健か(強か)という4つのキーワードで構成されていますが、こういったことを大切にしてほしいなと思います。入社してくれた人たちは、当社で定めている6つの行動指針を我々とともに体現していってもらいたいなと思います。


竹中
ビジョンでは人間力という言葉がありました。HPでは人間力は多くの要素(引き出し)を備えることだと書かれていますが、その為に必要なことは何でしょうか。


高木
多くのことを体験する、多くの人と出会う、多くの人と一緒に仕事をする、色んな感情を持つ…こういったことですかね。人は人でしか磨かれないと言いますが、こうやって竹中さんが私と話すことは勉強でしょうし、私にとっても勉強だと思います。


竹中
社会人の方、特に社長様とお話させていただくと、自分の引き出しが全然足りないと感じてしまいます。誠心力協を意識していれば、引き出しは増えていくでしょうか。


高木
誠心力協という言葉を追求すれば引き出しも多くなるし、引き出しが多くなれば誠心力協という言葉を更に追求できると思います。卵が先か、鶏が先かという話に似てますね(笑)。


竹中
ありがとうございます。常に心がけることが大切ですね。


高木
引き出しというのは知識とかではなくて、人としての幅です。優しさ、粘り強さ、きめ細かさなどたくさんの要素がありますよ。


短所は長所 活かせるときは必ず訪れる

竹中
色んな要素の中には、長所もありますが、短所も含まれていますよね。


高木
含まれていると思いますよ。要素は時に長所となり、時に短所となります。しかし、短所だとしても必要な場面はあるはずだと思っています。


竹中
短所が活かされたというエピソードはありますか。


高木
前の製造業の会社にいたときですが、私は商品をお客様に納品する最終工程の品質担当でした。製造の現場の方の中に、検査基準に本当に厳しい方がいて、ある時、私が納品してほしいと伝えていたものを、品質判定が可とも否とも取れる商品を否(NG)と判定し、出荷納品しませんでした。色んな立場や情報の多寡の違いもありますが、当時を客観的に見ると、出荷納品することが優先でした。この時は、「几帳面さ」が裏目に出た一方で、「無謀」「無茶」と言うような要素がプラスに働く場面でした。無謀・無茶、几帳面さという2つの要素が発揮されるのは、場面によって異なるということを学びました。


竹中
確かに、その方の几帳面すぎる性格も、ある場面では短所ですがある場面では長所ですね。


高木
そういうことです。短所は必ず長所になるんです。短所だと感じている部分も大きくしていって、引き出しにしまっておけば良いんですよ。必要になれば取り出す。その要素が必要になる場面は必ず来るはずですよ。 


竹中
その為にも引き出しを増やすことは大切ですね。


高木
そうですね。頑張ってください。 


どれだけ成果が出ても反省の日々

竹中
今インターンシップの中で、チームリーダーを経験することがあるのですが、チームとして目標をすり合わせていくことに難しさを感じます。高木社長はいかがですか。


高木
難しいと感じますし、何よりもそれが一番大切ですよ。一番大切だからこそ難しいんでしょうね。


竹中
10連覇は、チームで協力し同じ方向に向かっていた結果だと思うのですが、そんなチームを率いていた高木社長でも難しいと感じるのですね。


高木
反省の日々です。私自身は本当は全然できてないです。みんながよく頑張ってくれてるんです


竹中
社長の立場になってもそういったことを思うのですね。


高木
もちろんです。みんなが一生懸命働いてくれるからこそ、私が今こうして会社の外に発信できているんだと思います。


竹中
会社としてどれだけ成果が出ても、社長になっても、日々反省し成長しようとする姿勢に感銘を受けました。本日は貴重なお時間をありがとうございました。


高木
ありがとうございました。



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