青山学院大学3年生
半野 光一郎
株式会社新潟放送
島田好久
学生と経営者がお互いに意見交換しながら、相互理解を深めるHR sessionの対談コンテンツ。
今回は、株式会社新潟放送 代表取締役社長 島田好久様に、お話を伺いました。
2025卒業見込み。2025年卒業見込み。大学では、地方創生や文化の継承について学んでいる。社会人の方とコミュニケーションを取る機会を得られることに魅力を感じ、インターンシップに参加。ソースカツ丼を食べることが好き。
1958年3月生まれ。65歳。大学卒業後、1989年に新潟放送へ入社。 営業局長を経て、2013年に取締役に就任。2023年に代表取締役社長に就任し、現在に至る。
目次
半野
はじめに島田様のご経歴をお伺いしてもよろしいでしょうか。
島田
社会人になってから新潟に来まして、ずっと営業をしていました。本当はテレビとかラジオの番組制作をやってみたいなと思っていたんですけれどね。
半野
ずっと営業をされてきたんですね。
島田
本社の営業に配属された後に赴任した上越支社は一番小さな支社だったので、自分で1から10までやらないといけませんでした。ただ、この時が社会人のベースを作れた5年間だったかもしれないと思っています。その後、本社でラジオ営業部や東京支社での営業を経験し、役員になってから、テレビ番組の編成と報道制作という部署を受け持ってきました。
新たな事業領域への挑戦
半野
事業を広げていった経緯についてお伺いできますでしょうか。
島田
インターネットの時代になっていますけど、報道の使命は変わることなく、テレビ・ラジオの価値を追求することを大切にして、番組制作をしています。しかし、これからの時代に向けて成長戦略が必要でありますので、2023年の6月に子会社だった IT 企業や制作会社を並びに入れて、ホールディングス会社(認定放送持株会社)に移行したんですね。
半野
そうなんですね。
島田
この成長戦略に向けて、どうやってまずはこのグループ内のシナジー効果を出せるかを考えました。
半野
シナジーというのは事業と事業の関わりということですか。
島田
そうですね。新たな関わりがものを生み出すということです。 新潟放送の傘下にBSNアイネットという IT 会社があったんですね。ITと放送を結びつけると何ができるかを検討したり。それからもう一つは、制作会社と連携をとって、新たな事業を生み出す検討をしています。そして、新ビジネスの発掘や投資に取り組んでいるわけです。
半野
視聴習慣の変化とかインターネット広告市場の拡大とかが背景になって、新たに事業領域の拡大に挑戦されているということでしょうか。
島田
そうですね。いままで放送ファーストでずっとやっています。 しかし、いわゆる放送ファーストではないものの見方をしていかなくてはいけないと思っています。
半野
放送ファーストではない見方とは何でしょうか。
島田
今までは放送・テレビ番組ありきで何かを作っていました。そうではなくて、今はネット社会なので放送というのは後からついてくるものだという考え方です。そして、新たな事業の領域が作れないかと検討しています。
半野
なるほど、そうなんですね。
きっかけは、「県の思い」を具現化するため
半野
地域ソリューション企業への移行に向けて、どのようなことに取り組まれていますか。
島田
まずは社会課題の解決に向けて組織を作り替えています。 ビジネスプロデュース局という新しい局を社内に作って、地域プロデュースに取り組んでいます。きっかけは、新潟県の思いを具現化したところからスタートしたんですよね。
半野
「県の思いを具現化した」とはどういうことでしょうか。
島田
新潟県の「健康寿命を日本一にしましょう」という思いに寄り添い、新潟県と健康寿命の延伸に向けたプロジェクト(ケンジュプロジェクト)を立ち上げたんです。
半野
そうなんですね。
島田
新潟県と連携協定を結んで、新潟大学の医学部が協力しています。これから新潟大学と連携してやっていこうとしているのは、健康経営のあり方ですね。 解決型という意味では、1つの課題である健康という分野に一緒に取り組んでいます。
地域とつながっていると課題が見えてくる
半野
情報発信がどのように地域づくりに貢献していくのでしょうか。
島田
放送事業としては、自治体や企業とつながっています。色々な課題が見える位置にいるわけですね。
人や企業にフォーカスして魅力を全国に発信することが、地域づくりに貢献できるひとつの要素になってくるのかなと思います。
半野
そうなんですね。
島田
たとえばSDGsの観点では、行政の方に紙を減らしたいという課題があった時に、紙を使わずにその町の広報的なことを発信していったり、そこを切り取ってYouTube にアップするとか、そういう町の課題をお手伝いしています。
半野
資源削減のために、テレビ、インターネットを使ってその課題に取り組んでいるんですね。
島田
テレビ番組で紹介しながらYouTubeに載せて、それを見た人たちがこの町を訪れてみたいなと思う。そういったきっかけ作りをお手伝いしています。
半野
そうなんですね。インターネットだと自分の興味関心がある話題が選択されますけど、放送事業だと色々な情報が入ってくるので、それが新しいきっかけになりますよね。
島田
ネットのいいところはもちろんあるわけですけど、そこにテレビの価値をもう一度合わせてプラスアルファのものを展開できるようにという感じです。
半野
コンテンツの再価値化も行っているということですね。
島田
そうですね。
会社全体で作り上げてきたビジョン
半野
ビジョン構築プロジェクトについてお伺いしたいと思います。
どういった経緯からこの構築プロジェクトが始まったんでしょうか。
島田
これは 2021年1月1日に発表しました。2020年の夏、私は経営戦略という担務を受け持っていて、
2022年の新潟放送開局70周年に向け、外の課題と自社の課題を踏まえて、いろいろな議論を経営戦略室で重ねていたんですね。
半野
そうなんですね。
島田
若い人たちがいきいきと働けることって何かなと議論していたんですけれども、社員の方から上がってきたプランがこれだったんですね。
半野
なるほど。
島田
「ビジョン構築プロジェクトというのを立ち上げませんか」ということです。それで半年かけて20数人ぐらいの様々な部署の若い人といろんな議論を重ねてやっていったという背景です。
半野
社員主導でこのビジョンが出来上がっていったということですね。
島田
そうですね。これができて70周年の2022年までに「走り出せ夢たち」というキャッチコピーで「夢ファクトリー」という年間企画を作って、いろんな人たちの夢を実現することに取り組んでいきました。
半野
県民の夢を叶えていったんですね。
島田
そういったところに派生して繋がっていきました。
半野
会社全体の価値観が反映されたビジョンが出来上がったということで、このビジョンの浸透も早かったと思います。それはいかがでしたか。
島田
はい。ただ、それを1年で終わらせてはいけないので社内コミュニケーションに 「グッド トライ コミュニケーション」というものを取り入れたんですよ。
半野
それはどういったものなんでしょうか。
島田
「自薦というよりも他薦で、この人ってこんなにいい仕事をしてますよね」というようなことを募って、みんなで共有していました。半分楽しんでいたんですけどね。
半野
すごくいい取り組みですね。
島田
社内が活気つくように回していく、そんな取り組みに繋がっていきました。そして、私はこんなことに挑戦して失敗しちゃいました、みたいなことをどんどん社内で言えるようになるといいなと思っています。
半野
誰かの失敗から学ぶこともあるということですね。
「やってみなさい」と任せること
半野
ビジョン構築プロジェクトができてから、社内ではコミュニケーションが活発になったんですね 。
島田
そうだと思いますね。あと改めて気づいたのは、我々が若い人たちに任せるということが大事なんですね。
半野
なるほど。
島田
「あなたたちでやってみなさい」と任せると実際にやり遂げてくれます。そういったことができるのも、こういった社内的なプロジェクトができて、若い人たちが活性化して、先々をもっと見てくれるようになっていることかなと思いますね。
半野
若いうちから裁量権があって仕事ができると、すごくいきいきと仕事に取り組めますね。
島田
そうだと思いますね。
半野
それは島田様の過去の経験というのも影響しているんでしょうか。
島田
そうですね。あと言葉はよくないけどチームの中にいても傍観者になりがちなんですよね。
半野
当事者になれないんですね。
島田
「なりがち」というか。トヨタ自動車の豊田章男さんが社長を退任する時の記者会見で、自社の社員に向かって、「先の見えない時代は自ら現場に入っていかないといけない」と言っているんですね。僕はハッとしてですね。我々の身の回りはどうなんだと思ってですね、豊田さんの言葉を胸に刻んでやっています。
半野
そうなんですね。 それが先ほどあった「グッド トライ コミュニケーション」につながっているんですね。
コンテンツ制作への熱意と周囲への影響
半野
ご自身の経験の中で冒険の一歩を踏み出した経験はございますでしょうか。
島田
結構あるんですよね。よく企業では「この企画を売り切ろう」というのがあったんですけど、もしかしたら、そこにはあまり協力できてなかったかもしれないんです。むしろ、若い頃は、自分で企画を立てて自分でセールスするのが好きだったんですよ。
半野
そうなんですか!行動力と体力がすごいですね。
島田
例えば ラジオで言うと好きなコーナーを作っちゃうとか、学びもありましたけど、すごく怒られました。
半野
島田社長も過去に失敗されて今があるということですね。
島田
役員になってからも、 初めて編成を担当しまして。 コンテンツが重要ですから、社長の了解も取らずに、「もっとあれを作りましょう」と当てもなくどんどん言っていました。例えば、制作の方に行って「編成枠を工夫して、土曜日の2時間をあけるから、あなた方で番組を作ってみて」と、「もっともっと新潟の情報を流していく、新潟の人に喜んでもらえるような番組を作ろうよ」と、結果的にはやったんですけど、なかなか視聴率が上がらず先輩にお叱りを受けましたね。
半野
そうなんですね。
島田
そこから、いろんな人からアドバイスをいただいて、若いディレクターの人たちもその気になっていってくれました。今では、その時間帯で一番いい視聴率が取れるというようになりまして、今振り返るとよかったなと思います。それが冒険ですね。
半野
そのモチベーションの根源というのは何だったんでしょうか。
島田
「やってみたいことをやっちゃおう」という思いと県民の皆さんに多くの情報を提供したいという思いがありました。でも、結構でたらめもやったので、怒られましたね。
チームで動かないと最終的に形にできない
半野
個人の挑戦よりも、チームの一員の時のほうが、挑戦は慎重にならないといけないと思います。チームの一員として活動する上でどのようなことを大切にされていますでしょうか。
島田
私がやったこととはちょっと合っていないかもしれないんですけど、チームで動かないと形は最終的に作れないですよね 。
半野
限界がありますよね。
島田
なので、まずはもちろんですけど、協調性がないといけませんね。もう一つは、チームリーダーとして個々の長所をどうやって引き出すかということを意識しています。
半野
なるほど、挑戦心を持ちつつもチームとして成果を最大化するためにはどうすればいいかを考え続けるということでしょうか。
島田
そうですね。あと、Noと言った人も最終的には協調していき、決まったことにはやっていかないといけない訳ですけど、そこをうまくコントロールしていくというところも大事かなと思いますね。
会社と新潟をより活発にしていきたいという思い
半野
今後の展望についてお伺いしたいんですが、どのようなことに力を入れていきたいと考えていらっしゃいますか。
島田
これから取り組みたいことの一つは、企業内起業を出すことです。
半野
企業内起業ですか。
島田
新潟放送から新しい会社を作り出すことは、もう2年前に遡ります。
半野
ビジョン構築プロジェクトが起きた時の株式会社「語れ。」という会社ですね。
島田
そうです。若いある社員がプレゼンをしてきて「こんな思いがあるんですけど」と、会社としては初めてなんですけど 「じゃあ起業しようよ」 と後押しました。まだリソースも限られているんですが、しっかりやってくれていると思っています。将来もっと大きくなっていける企業に育て上げたいなと思っています。
半野
やはり挑戦を後押しする風土というのはあるんですね。
島田
そうなんですよね。あと彼が1号だとしたら、ここ2年3年の間には2つ目とか3つ目の会社を作りたいなと思っているのが1つです。
半野
会社全体が活発になっていきそうです。
島田
もう1つは、新潟を世界ブランドにしたいなと、これは笑い話なんですけど、こんなことができたらいいよなあと。
半野
すごく素敵な思いだと思います。
島田
世界の人に「新潟いいよね!」とわかってもらえるような、そんな新潟がどうやったら作れるかな、楽しいだろうなと思っています。
半野
すごくワクワクします。求める人材に変化はありますでしょうか。
島田
不器用でもいいんですよ。ただ、冒険心とわくわくを持った人がいいなと思うんですよね。
半野
すごくビジョンに繋がってきますね。
島田
こういう人たちがいいなと思っています。
欲張ってチャレンジしていくこと
半野
最後に学生に向けてメッセージを一言いただけますでしょうか。
島田
はい。学生でいられる時と社会はもちろん違う。でも学生でいられるときに、いろんなことにチャレンジしていてほしいんですよね。 1つを深くやることも必要だと思います。でも、いろんなことに目を向けるというのもいいなと思います。
半野
自由な時間が多いのは学生だけですもんね。
島田
この時間を有効に使ってもらいたいです。
半野
積極的にチャレンジしていくということが必要になってくるんですね。
島田
どこの世界を目指すかというのは別にして、もっと欲張っていろんなことをやって欲しいと思います。
半野
限界を決めないで、チャレンジ精神を持って生活していきたいと思います。
今回は刺激となるお話をたくさんお伺いすることができ、すごく学びになる時間でした。
本日は貴重なお時間ありがとうございました。
島田
ありがとうございました。
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