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ライバルを味方に、リユースをスタンダードに

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ライバルを味方に、リユースをスタンダードに

南山大学3年生

杉田 唯

株式会社買取王国

嶋本 匡能

interview

学生と経営者がお互いに意見交換しながら、相互理解を深めるHR sessionの対談コンテンツ。

今回は、株式会社買取王国代表取締役社長 嶋本匡能様に、お話を伺いました。

南山大学3年生
杉田 唯

南山大学総合政策学部。大学のゼミで、組織行動論・組織心理学を学んでいる。人材業界を中心に就活中。就活と並行してキャリアコンサルタントの資格取得のために勉強を行っている。

株式会社買取王国
嶋本 匡能

1995年 兵庫県立鈴蘭台高卒。1997年 株式会社Kurokawa入社。2021年買取王国取締役就任。兵庫県出身。46歳。

目次


 


辞めたくない会社をつくってください

杉田
はじめに嶋本様のご経歴をお伺いしてもよろしいでしょうか。


嶋本
兵庫県出身で、高校は地元の進学校に通い、進路を決めずに卒業しました。そのあと1年半、八百屋とラーメンの屋台をやってからKurokawaという会社に入社をいたしました。


杉田
ご自身でやられていたんですか!?
独立志向が卒業直後から表れているんですね、すごいです。
実際に社長になられるまではどんなお仕事をされてきたのでしょうか。


嶋本
前職のKurokawaでは、11年間フランチャイズの本部を担当させていただきました。その後独立しようと思ったのですが、ちょうどリーマンショックが起きてしまったんです。経営の勉強をしないと起業しても倒産するなと思っていたところ、当時の買取王国の社長(現会長)に、「経営を勉強するならうちはどう?」と声をかけていただいて入社いたしました。


杉田
そのころから次の社長になることが決まっていたのですか。


嶋本
いえ。自分で会社を立ち上げたくて買取王国に入ったので、社長になるつもりはありませんでしたし、会長もそれを知っていました。
入社日にご飯に連れて行ってもらったのですが、会長に「あなたが辞めたくないと思う会社を作ってください」と言われたんです。私は独立する前提で入っているのに笑。矛盾しているなと思いつつ、ここで働くと決めた以上はいい会社にしたいなと思いました。


杉田
そこで考えが一致したのですね。社長になるまでに何年くらいお勤めになったんですか。


嶋本
社長になって1年、社長になるまでは14年ですね。


杉田
14年間働かれたことでさまざまな知識を身に着け、認められたことで社長になられたのですか。会長様からのお墨付きなどがあったんでしょうか。


嶋本
やれるんじゃない?とは言われました。
会長も70歳で次に譲りたいとおっしゃっていたんです。その前は65歳で譲りたいとおっしゃっていたことを覚えていたので、そのときに実現してあげられなかったなと思っていました。改めて70歳と聞いたので、いよいよだなと思い、会長を居酒屋に呼び出して「社長やるので何したらいいですか」と聞きました。


杉田
お話を聞いている限り、結構近い間柄だと感じます。


嶋本
近いと思います。弊社は会長も社長も席が隣同士でみんなと一緒のフロアにいるので、幹部や社員さんだけじゃなくてパートナーさん(アルバイト)とも距離感は近いと思います。


杉田
そうなんですね、社内の雰囲気を知れてうれしいです。


1つの店舗が1つの企業

杉田
HPを拝見して、御社では従業員のみなさま1人1人が経営意識を持つことを大事にしていると感じました。ですが、従業員全員がその意識を持つのは難しいんじゃないかなとも思います。意識を定着させるために何か取り組んでいることはありますか?


嶋本
私たちはビジネスモデル的に、パートナーさんであっても自分で仕入れをして、商品の値段を決めて、店頭に並べて工夫をして、どんな方が買っていくのか、いくらだったら売れないのかを考えるんです。なので、商流はお店にいれば覚えられるというか。


杉田
普段のお仕事が経営意識を自然と育てているんですね。


嶋本
はい、これが日常なんですよ。会長はこれから30人くらい経営者を育てたいと思っていらっしゃっていて、私も賛同しています。これから世の中1億総プレナー時代といって、店長以上の人たちは、社内起業とか、プロジェクトチームのリーダーとかにならないと取り残されてしまいます。ですので、今は社内研修をやってビジネスモデルの作り方を教えています。年に1.2回社内公募をして、立場に関係なくやりたいことをプレゼンしてもらい、面白かったら実践もしているんです。


杉田
店舗ではすごく責任感が培われそうです。


嶋本
買取王国の業態だと年商が1店舗当たり1億8000万円弱あるんです。日本の中小企業では1億7000万円くらい。そう考えると、店長って1つの中小企業と同じだけの責任をもっているということですよね。まだまだいろいろなことを経験させてあげたいなと思っています。


杉田
1つの店舗が1つの企業、すごく責任がありますね…。


「また来るね」と言われるために

杉田
経営理念の「夢ある商品とサービスを通して、喜びと心の満足を創りだしていきます。」をもとに、どういうメッセージを従業員の皆様に発信しているのかをお聞きしたいです。


嶋本
経営理念以外にも付随するものがたくさんあるんです。その中でも一番伝えているメッセージは、ミッションです。「顧客感動の追求」ですね。去年からその副文にこんな言葉を付け加えさせていただいています。「すべての行動はお客様の『また来るね』の一言のために」です。


杉田
顧客感動の追求なんですね。いつどのように現場に伝えていらっしゃるんですか。


嶋本
毎月の店長情報共有会の時間でも必ずお伝えするし、現場に入ったときに「どうしたらお客様が『また来るね』って言ってくれると思う?」と質問するようにしています。


杉田
教えるよりも質問ベースなんですね。


嶋本
段階次第ですね。ちゃんと考えて行動できる人に対しては質問にします。


競合他社を味方に

杉田
HPの価値再生感動追及業という言葉も印象に残っています。ここについて嶋本様の想いや考えを教えてほしいです。


嶋本
私たちは誰かの不要になったモノにまた価値を見出して、次の購入者に正しく価値を届ける橋渡しのお仕事をさせていただいています。
ですので、今「REUSE IS GOOD」をコーポレートメッセージに掲げているんです。リユースっていいよねっていう世界にしていきたいんです。


杉田
たしかに、まだまだリユースって浸透はしていないですね。


嶋本
リユース企業のほとんどは同じような理念、ビジョンを持っているのに、みんな一生懸命競争していて。だけど、自分たちで価値再生ができないものは、既に取り組んでいる企業に手伝ってもらえばいいじゃんって考えが変わったタイミングがあったんです。そこからすごくいろいろな可能性が増えました。


杉田
ライバルとして見るのではなく、味方にするんですね。


嶋本
はい。今の買取王国はモノの価値再生を一生懸命行っているんですが、価値再生ってモノだけじゃないなと思うようになりました。例えば人。定年退職したけれど、まだまだ働ける方はたくさんいらっしゃいます。そういう方たちが今までで培った経験、技術を使ってもう一回活躍できる場を作れないかとか。文化とか街とか、いろいろなものが価値再生できるんじゃないかなと思っています。


杉田
競合他社という概念はあまり持たれていないのでしょうか。


嶋本
同じ商売をしている以上は競争関係にあると思います。だからといって、うちだけ生き残ればいいという考えでは続かないと思うんです。相手が苦手でうちが得意なことだったら、「手伝いますよ」って言いたいですし、逆にうちが苦手なことで他社さんが得意なことは教えてくださいって言える環境でありたいなと思っています。


杉田
同じ環境の中で助け合いをしながら、ですね。どんな企業と協業したいと考えていますか。


嶋本
今の時点ではトレーディングカードが得意な企業の協力のもと、査定システムやノウハウを提供いただいています。逆に弊社からは古着のノウハウをご提供させていただいています。


杉田
現時点で既に助け合いをしていらっしゃるんですね。


嶋本
そうですね、ゆくゆくは全ての同業者とつながりたいです。


メンズ商品はおまかせください

杉田
協力関係といっても、競合他社がたくさんあると思うのですが、その中での御社の優位性や強みがあれば伺いたいです。


嶋本
メンズ特化が最大の特徴ですね。チェーン展開しているメンズの古着屋では、売り上げNo.1と言っても過言ではないです。ミニカーやプラモデルなど、男性が好むことが多い商品を主に扱っているのも大きな特徴です。それと、商材では工具。上場企業の中で工具の専門店としてチェーン展開しているのは弊社だけなので、大きな強みかなと思うところです。


杉田
主なターゲットは男性なんですね。


嶋本
もっと女性に活躍してもらって女性の商品も扱えたほうがいいんですけどね…。
実は過去に子育て中のママを応援するリユースショップを作ったのですが、ちょうど緊急事態宣言の初日がオープンになってしまい、1年で閉めることになりました。ただ諦めずに女性が活躍できる、女性のお客様に喜んでいただける業態はやっていきたいです。


杉田
ぜひお願いします。男性向けの商品に強いということですが、ほかにも特徴はありますか。


嶋本
ECよりもリアル店舗を優先していることでしょうか。私たちはお店に来られたお客様にいかに楽しんでいただくかに注力しています。あとは、働いているみなさんは、○○が好きという方が非常に多いんですよ。やっぱり好きっていう感情は、大きなモチベーションですよね。自分の好きなことだったらプライベートの時間でも調べますよね。仕事以外のところでも仕事と関わるのって好きじゃないと難しいと思うんです。そういう方々がたくさん働いてくれているので、人の面も強みだと思っています。


杉田
対面でお客様の声を直接聞けるような環境を大切にして、従業員のみなさまの好きという力で仕事に取り組んでいらっしゃることが強みなんですね。


眠る40兆円に光を

杉田
先ほど女性向けの事業をしていきたいと伺いましたが、それに加えて今後どんな事業展開をお考えですか。


嶋本
まず今は足元をきちんとすることが第一です。今の買取王国、工具買取王国をしっかり進めていかないといけない。新しい商材にもどんどんチャレンジしていきたいと思っています。その中で育った商材があれば、専門店にして小さな形でどんどん出店するとか。商材の特性によっては日本よりも海外のお客様に喜ばれることもありますので、海外展開も視野に入れています。今はECが弱いんですが、そこにも着手していかないといけないですね。


杉田
ターゲットに応じた展開を考えていらっしゃるんですね。


嶋本
一番は…、私の思いの一番強いところなんですが、リユースの普及を行いたいです。
リユースを利用される方って大体全体の3割強なんですよ。世の中には眠っている資産が40兆円あると言われているのに、リユースの市場規模は3兆円ちょっと。その小さなマーケットの中で切磋琢磨している状態なんです。これって結構もったいないですよね。


杉田
もっとたくさんの人にリユースを知ってもらいたいですね。私は古着が好きなのですが、モノはあまり買おうと思ったことがなかったのでお話を聞いてぜひ参加したいと思いました。


嶋本
そうですね。現状、いらなくなったものを売るって考え方がない人も多いし、売れますよと言っても売らなくていいやっていう人も多いんです。
そういう方々って裕福な方が多いです。既に自己実現の欲求を満たしている方が多いので、今度は誰かに貢献したいという思いが強まるんです。ですので、弊社では「モノドネ」という取り組みを行っています。


杉田
どんな取り組みなのでしょうか。


嶋本
掲載されている寄付先を選び、モノを郵送していただくだけで当社がモノを査定し、その査定⾦額すべてを寄付先に寄付するという取り組みです。そうやってリユースに知らず知らずのうちに参画してくれる人が増えてほしい。時間はかかるかもしれないですけどね。


杉田
HPの従業員インタビューを拝見しても、モノドネを推している印象があったので社長様の思いが伝わっている部分もあるんでしょうね。


失敗なくして成長なし

杉田
嶋本様から見て、御社ではどんな社員が活躍する傾向にあると感じていますか。


嶋本
いつも私が言っているのは「とにかく行動できる人」です。知識だけを詰め込むだけで、行動が伴わない人もいますよね。そういう人は活躍しないです。知識がなくても、チャレンジして失敗もたくさんする。それでこそ成長していきますから。自分の力が足りなくても、ちょっと頑張ってみようと思ってくれる人は活躍してくれているかなと思います。


杉田
HPも拝見して、素直な人を求めると記載されていましたがここにもつながりますね。
実際にそんな社員さんが大半を占めるんですか。


嶋本
にぎやかで面白い人がたくさんいます。
学歴がなくても、仕事を通じて仕事に一生懸命になれる人もいます。失敗から学んで、それでも上がってくる意欲のある子たちは多いですね。


杉田
みなさん好きなモノが多い人なんですか。


嶋本
最初はそれがきっかけで、そこからどんどん仕事が楽しくなって、会社が好きになるみたいな段階があるみたいですね。ここ数年は採用チームと教育チームの活躍が素晴らしくて、新卒の成長速度がめちゃくちゃ早いです。2年目で店長にチャレンジする研修に出てくる人とか、1年目から「私店長やります」って宣言してくれる人とかがいて、3.4年目の人の活躍もすごいです。


杉田
最近採用や育成の取り組みで変えたことがあったんですか。


嶋本
採用はゼロベースでみんなが一生懸命勉強して、毎年手を変え品を変え、ですね。どうしたら学生に響くかをすごく考えてくれています。それだけ熱量をかけて採用した人たちがすぐに辞めちゃうのってやっぱり悲しいなと思って、去年からメンター制を作ったんですよ。それがすごく良くて。新卒社員が上司を選べる、上司が部下を選べるって形にしています。


杉田
そこからガラッとよくなっていったんですね。


嶋本
採用はまだ苦戦している部分もたくさんあると思うんですけど、成長速度は明らかに早くなりました。新卒を迎え入れるコーチをやってくれるのは2年目の社員が多いんですよ。彼らの成長スピードもびっくりするくらい早いです。


杉田
教える側のほうが成長しているんですね、すごいです。


求めるのは行動力

杉田
会社の体制もさらに良くなっている状況だと思うんですが、どういった学生に入社いただきたいと考えていらっしゃるんでしょうか。


嶋本
私は就活をしたことがないのであれなんですけど…。まず一番大切なことって没頭できるかどうかだと思うんですね。なにかにしっかり打ち込めて、時間を忘れるくらい没頭できる仕事ができるか。「社会に出て大丈夫かな」って不安はあるけどめっちゃ元気な人とかは向いているんじゃないかと思います。


杉田
「とにかく行動できる人」そのものですね。


嶋本
杉田さんは将来やりたいことって明確にありますか。


杉田
明確にはないですが、私は「働くを良いものにしたい」を目標として掲げています。


嶋本
いいですね。世の中にはぼんやりしている人が多いと思うんです。「将来の夢って何ですか」って言われたらそれっぽい耳障りのいい言葉を言えるんですけど、本心じゃなくて。実はないんですって人のほうが多いと思っていて。私自身もそうでした。私も40歳になるまで、将来何したいとかなかったですから。それでも目の前のこと一生懸命やっていたらこんなことできるようになったら、これをやりたいんだって目標が私は見えてきたんです。


杉田
明確な目標、希望があるという人よりも行動に移せる人に入社してほしいということですね。


嶋本
あとは独立精神旺盛な子はいいと思います。自分で何かやりたいとか、会社のお金を使ってこんなことをやろうっていう野心的なものでもいいですし、何か自分がリーダーとなってこんなプロジェクトをやってみたいとか。そういう環境は整っていると思います。


杉田
チャレンジですね。
今までのお話をお伺いしていて、HPでは得られない社長の思いを伺えてよかったです。
ありがとうございました。




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